ブレイク前夜のMaaSをアフターマーケットの現場から考えるセッション開催…IAAE 2018

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IAAE 2018セミナー「MaaSの時代がやってくる」
  • IAAE 2018セミナー「MaaSの時代がやってくる」
  • 株式会社NTTドコモライフサポートビジネス推進部モビリティ事業担当部長小笠原史氏
  • ナイル株式会社代表取締役社長高橋飛翔氏
  • 株式会社ディー・エヌ・エー 執行役員 オートモーティブ事業本部長中島宏氏
  • 株式会社notteco代表取締役社長東祐太朗氏
  • 株式会社イード『レスポンス』編集人三浦和也氏
  • NTTドコモ小笠原氏プレゼンテーションより
  • NTTドコモ小笠原氏プレゼンテーションより

国際オートアフターマーケットEXPO2018は、今年で第16回の開催となった。自動車の売買・整備・メンテナンスなど、いわゆる自動車アフターマーケットに関する新商材やビジネスの展示会である。

今年はその会場で、有料セッション「MaaS(マーズ)の時代がやってくる」が開催された。自動車の所有形態が変化しつつある現在の市場環境について、最新のビジネス事例から考えるセッションだ。会場には、自動車流通の現場で活動しているビジネスパーソンが数多く詰めかけた。

セッションのモデレーターを務めたのは、レスポンス編集人の三浦和也氏。いま注目を集めている「MaaS(Mobility as a Service、サービスとしてのモビリティ)」とは具体的には何であるか、自動車アフターマーケットの現場にどのような影響があるのか、日本を代表するMaaS事業者であるパネリストの面々から話を引き出す形でセッションは始まった。

最初に自社のMaaSサービスを紹介したのは、NTTドコモ ライフサポートビジネス推進部 モビリティ事業担当部長である小笠原史氏。NTTドコモは昨年10月、『dカーシェア』をスタートした。タイムレンタルの「カーシェア」、個人間カーシェアリングの「マイカーシェア」、そして「レンタカー」を、ひとつのアプリで、必要に応じて使い分けることができるサービスだ。

「dカーシェアの特徴はまず、月額無料であること(※他のタイムレンタルは月額会費が必要であることが多い)。まずは一度使っていただきたいという想いで無料というチャレンジをしています。また、ドコモの会員サービスであるdアカウントで使えるので、多くの人にとって使いやすく便利であること。さらに、dポイントがたまることも特徴です。ポイントをいろんなお店で使える一押しのメリットです」

NTTドコモ小笠原氏プレゼンテーションより
「個人間のカーシェアリングだけでなくレンタカー業者とも提携しており、レンタカーのサービスを受けることもできます。アプリを通して、予約から決済、ポイント付与まですべてできます」

ドコモといえば一般的には通信キャリアというイメージであるが、なぜモビリティサービスに参入するのか、と三浦氏から問われた小笠原氏は、「ドコモには、安心安全にサービスを提供するというノウハウを積み重ねてきた実績がある。これはシェアリングという(新しい)サービスを広めるにはとても大事な要素だ。その点でお客様に貢献できると考えた」と、ドコモならではの強みを生かしていくことをアピールした。

つづいてサービスを紹介したのは、ナイル代表取締役社長である高橋飛翔氏。ナイルは、ウェブビジネスのマーケティング支援や自社メディアを展開する企業であるが、今年1月から、カーリース仲介サービスである「マイカー賃貸カルモ」をスタートさせた。

「マイカー賃貸カルモでは、国産新車全車のカーリースに対応しており、オンラインで申し込みが完結するところ、リース期間を1-9年まで自由に選べることが特徴です。(自社の知見を活かし)AIを活用してマーケティングを合理化して顧客にリーチしていきます。マーケティングコストを徹底的に合理化することを目指しています」

ナイル高橋氏プレゼンテーションより
マーケティングのスペシャリストとして、現在の自動車販売やリースに関して改善点はないかと三浦氏から問われた高橋氏は、「リースの仕組み自体は素晴らしいが、例えば車庫証明など、アナログな手間が多いせいで見込み客を取りこぼしているのではないかと感じる」と、マーケティング観点から問題点を指摘した。

続いて、DeNA執行役員 オートモーティブ事業本部長の中島宏氏がサービスを紹介した。DeNAは、日産自動車と提携して無人タクシーの実証実験を進めており、そのほかにも数多くのMaaS事業を手掛けている日本のトップランナーである。

「当社はゲームの会社という印象があるかもしれないが、最近は横浜ベイスターズの会社ですね、といわれることが多くなってきました。球団運営も軌道に乗り、観客動員数も右肩上がりだ。当社にはそのようにインターネット以外の領域のビジネスもあり、そのひとつがオートモーティブ事業。日産自動車と提携している『EasyRide』は、ちょうどいま横浜で実証実験をしています。そのほかにも、自動運転バスを利用した交通サービス『ロボットシャトル』、ヤマト運輸と組んで自動運転を利用した運輸事業を目指す『ロボネコヤマト』。これらが自動運転系のサービスです」

そのほかに、モビリティサービスも並行して開発を進めている。

「タクシーAI配車アプリの『タクベル』はまもなくリリース予定。また個人間カーシェアリングの『Anyca(エニカ)』もある。Anycaにマイカーを登録すると、平均して毎月2万~3万円が手に入りますので皆様もぜひご検討ください。また駐車場シェアリング『akippa(あきっぱ)』とは資本業務提携しています。最近は土地を余らせている法人が使っているケースがあります。遊休不動産の活用ですね。」
DeNA中島氏プレゼンテーションより

DeNAがオートモーティブ事業を手掛ける動機について三浦氏に問われた中島氏は、「市場規模の大きさや、変化のタイミングという理由もありますが、まず湧き上がる思いとして、モビリティ凄い、ということがあります。人々のライフスタイルや社会システムに深くかかわっている。モビリティサービスを仕事にするのに、こんなに面白い時代はないということです。また、交通不全という日本特有の本質的課題もある。過疎地の交通弱者の問題や、少子高齢化による人手不足などです。こういった課題を解決したい、という想いでやっています。」と、強い思い入れを明らかにした。

オートモーティブ関連事業が稼ぎ頭になるのはいつか、と三浦氏から問われ、「3年後にはきちんと稼いでいないとクビが飛んでいる(笑)。特にタクシー配車アプリは直近に事業化することもあり、期待している」と応えた。

最後にサービスを紹介したのは、ライドシェアサービスを展開するnottecoの代表取締役社長、東(ひがし)祐太朗氏。「nottecoは2007年からサービスを開始しており、もう10年以上になります。当時は「mixi」全盛の時代。コミュニティでスキーや音楽イベントの相乗りが当時されていたようです」

ライドシェアサービスといえば、海外ではUberが知られているが、日本では規制のためサービス提供が難しいといわれている。この点について東氏は、「nottecoは中長距離型のライドシェアサービスで、ガソリン代や高速道路料金をシェアすることによって、移動コスト節約を目的にしています。営利目的で他人を載せると白タク行為になってしまいますが、このように移動に掛かる実費のシェアについては、国土交通省や経済産業省からお墨付きをえています」と説明した。

日本ではまだ少ないライドシェアサービスだが、海外ではUber以外にもサービサーが広く展開している。「nottecoと同様の相乗りサービス『BlaBlaCar』は、ヨーロッパでは広く知られており、近いところはUber、遠いところはBlaBlaCar、という使い方をされています。」

nottecoの具体的な利用シーンについて東氏は「スキーや音楽イベントの参加者同士で行くと、同じ目的の人たちと行けて楽しいということで使われています。熊本地震のボランティアの方の相乗りは、それぞれがクルマで行くと現地で渋滞してしまうので、相乗りで行きましょうということがありました。また、単身赴任の方などは(月に何度か長距離移動をするので)月10万円ほども移動コストを節約するケースもあります」

また東氏は、ライドシェアを公共交通に利用する事例にも言及した。「北海道の天塩町で実証実験をしています。天塩町は隣町へのバスや電車がなくなってしまい、高齢者の方はクルマが無くて動けないという問題があります。(近くの街である)稚内にも日帰りできない状態でした。」

「住人同士でnottecoを利用して相乗りをしていただくというプロジェクトをしており、今のところ1日1往復ほど相乗りで移動できるようになった。公共が担っていた部分を個人が担うという実証実験で、地方の公共交通の問題を解決する取り組みです。」
notteco東氏プレゼンテーションより

またnottecoのユーザー数が増えていることについて三浦氏が聞いたところ、東氏は「民泊が広まってきており、シェアリングの利用者が増えている。そうなると移動もシェアで、という人が増えているのではないか。そのようにシェアに抵抗のない人が増えていると思う」と状況を分析した。

このように4つの事業者から、従来の“車を買って所有する”以外の新しい利用形態について最新の事例が紹介され、自動車アフターマーケットの現場に立つ参加者たちは、今後市場環境がどのように変化していくのか、それぞれの立場から感じ取っていたようだ。

《佐藤耕一》

日本自動車ジャーナリスト協会会員 佐藤耕一

自動車メディアの副編集長として活動したのち、IT企業にて自動車メーカー・サプライヤー向けのビジネス開発を経験し、のち独立。EV・電動車やCASE領域を中心に活動中。日本自動車ジャーナリスト協会会員

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