超小型モビリティ、自動運転、電動バスの未来…電気自動車普及協会

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  • 国交省 自動車局 環境政策課 西本俊幸課長
  • CO2総排出量の20%が自動車、航空機などが占めている
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  • 車両の認定制度を自治体に移管して普及を進める
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電気自動車普及協会(APEV)の会員向けセミナーが9日、東京都内で開催された。国土交通省、ルネサスエレクトロニクス、東京都市大学から、担当課長や研究者を招いてそれぞれの電気自動車(EV、PHEV、FCV)に関する取り組みが発表された。

●超小型モビリティの普及の鍵は価格?

国土交通省は、電気自動車の普及促進のための施策と、その施策における超小型モビリティに対する取り組みについて、自動車局環境政策課西本俊幸課長がセミナーを行った

国交省は、主に環境問題政策という視点から電気自動車の普及にと取り組んでいる。西本氏によれば「COP21で策定された、2030年までにCO2の排出量を26%削減する(2013年比)という目標は、ハード、ソフト両面からの施策により順調に推移している。」という。しかし、目標達成には継続した対策が欠かせないとする。

とりわけ、国内CO2の総排出量の約2割弱(17.4%)を占める運輸部門では、その8割以上(総排出量のうち14.4%)が自動車によるものとされ、国交省でも力を入れている分野だ。ハード面の施策では、自動車の燃費向上技術の普及拡大や次世代エコカーと呼ばれるEV、PHEV、FCVの普及促進に取り組んでいる。ソフト面では、エコカー減税や補助金による後押しだ。

国交省が自動車部門で管轄している領域は、バスやトラック、重機など商用車だが、超小型モビリティにも注目しているという。地方交通における特性や課題を考える上で、超小型モビリティが、商用車と乗用車の間を埋めてくれるような施策に有効なのではないかと見ている。

「例えば、多くの乗用車ユーザーは、平日は一人で運転し10km以内の移動が全体の70%を占めている。高速に乗ることもない。それでも車を何台も持つわけにはいかないので大きな乗用車を所有している。ガソリンスタンドも減っている中、給油のための無駄な移動も発生している。このような課題は地方や離島などで顕著であり、超小型モビリティが有効なソリューションになるのではないか。」

地方交通の課題解決や地域おこしに加え、新しい移動手段として超小型モビリティは、高齢者支援、子育て支援にもつながる可能性があり、新しい市場創出にもつながる。宅配便では、ドライバー不足や不在再配達といった問題から、ラストマイルや小口配送に超小型モビリティを活用する実験なども行われているという。

他にも観光地の足としての活用、過疎地・高齢化が進む地域での業務・校務での活用、都市部のカーシェアリングなどの活用や実験が行われている。すでに全国で7000台以上の超小型モビリティが稼働しているという。

超小型モビリティの課題についても検討しており、西本課長は次のようにまとめた。

「車両としては、原動機付自転車と軽自動車の間をカバーする位置づけで、自治体単位で認定制度を設けている。また、調査によると、利用者が適正と考える値段が20万円前後であるのに対し、実際の車両価格は80万円前後と需給価格に乖離がある。認知度も20%を下回るなど高くない。認知度向上については、学生向けにEV・超小型モビリティのデザインコンテストを実施したりしている。今後も超小型モビリティへの取り組みを続けたい」

●2020年に高速道路限定でレベル4自動運転は達成可能

ルネサスエレクトロニクス 板垣克彦技師長(第一ソリューション事業本部・CTO室)のセミナーは、同社が取り組む次世代自動車技術にかかわるデバイス、ソリューション開発の視点から、EVや自動運転の現状を分析するものだった。

ルネサスエレクトロニクスでは、オートモーティブの分野では、次世代エコカー、コネクテッドカー、自動運転の技術に力を入れている。現在、電気自動車の市場では、中国が大きな広がりを見せているという。中国で検索エンジンサービスやさまざまなネット事業を展開するBaidu(百度)がEV事業に参入したり、自動車産業以外のメーカーがEVを開発・市場投入している。

「市場規模でいえば、中国のEV市場は米国に匹敵する。とくに電気自動車のSUVのニーズが近年高まっており、ルネサスでも従来型よりコンパクトで100kW級のパワーのあるインバーターユニットを開発した。もうひとつのトレンドはコントローラの小型化。インバーターやモーター制御のユニットをいかに小さくするも問われている」

超小型モビリティからSUV、トラックなど広い車種展開をする上で、EV関連ユニットの小型化、大出力化が業界のトレンドのようだ。

コネクテッドカーのためのソフトウェアプラットフォームも開発している。こちらもエントリーモデルからプレミアムカーまで対応できるように、現状でも、コストと機能面で広いニーズに対応するスケーラブルなプラットフォームが求めれらているという。

次のトレンドはクラウドにつながる通信方式だという。

「通信モジュールは現在の4Gから5Gの時代になろうとしている。ここで問題になるのは通信容量だ。5G通信のトラフィックに対応するため、車の中のネットワーク(CAN)もギガビットクラスの帯域が必要になってくる。同時に重要なのは、コミュニケーションゲートウェイと呼ばれるクラウドと車内ネットワークをつなぐ部分。単に大容量のデータを扱うだけでなく、堅牢性や安全性(セキュリティ)を担保するものでなければならない」

車載システムの堅牢性や安全性は、次のADASや自動運転技術で重要なポイントである。制御するECUやコントローラが増え、センサーやカメラもひとつやふたつでは済まなくなってきている。自動ブレーキもブレーキだけでなくステアリングやサスペンションなどと協調動作が必要になってくるかもしれない。また、センサーやコンポーネントが増えるということは、どれかが故障した場合のフェイルオペレーションの設計も高度になる。

さまざまなコンポーネントやモジュールと統合的な制御に対応するため、ルネサスエレクトロニクスでは、2016年にGMキャデラックを自社ソリューションで自動運転を可能にするプロジェクトを実施した。2017年にはフォードモーター(リンカーン)で同様な自動運転カー化を行った。どちらもCESで発表されているものだ。

自動運転について、板垣氏は2つの潮流があるという。

「オーナーカーとしての自動運転とサービスカーとしての自動運転だ。前者のポイントは、事故防止、経済性、環境性能、そして運転する楽しさを備えることで、自動運転レベルでいえばレベル2から3に相当する技術が必要。サービスカーは無人運転まで考慮するので、100%の安全性と利用者の利便性が追求され、レベル4以上の技術が必要となる」

そして、オーナーカー市場は既存の自動車メーカーがベースとなり、機能はプリインストールされたものがほとんどでクローズドプラットフォームになりがちだ。サービスカーの場合は、サービスプロバイダーやネットのプラットフォーマ―が主体となって開発を進め、サービスは基本的にオープンでアドオン式となると板垣氏は予想する。

当然ながら、自動運転にも課題はある。例えばGoogleカーは実際の道路で走ってはいるが、通常の交通の中ではじゃまな存在にもなっている。速度や走り方の問題だ。また、センサーやカメラが増えてくると、走行中にぶつかる虫も大きな問題となる。このような現実的な問題に加え、あらゆる状況に対応する制御は簡単ではない。

レベル2とレベル3の違いはドライバーが運転に集中する必要があるかどうかだ。現在、この境界を超えるのはまだ難しい。同様にレベル4とレベル5の間もまだ相当な距離がある。レベル5ではいかなる状況でも自律して走行できる必要がある。その上で自動運転のロードマップについて次のように語った。

「しかし、高速道路内、制限区域内などエリアを限定すれば、じつはレベル4の実現はそれほど難しくない。2020年までなら、おそらく高速道路限定でオートパイロットは実現するだろう。」

●「エリーカ」の技術が生きるフルフラット電動バス

最後は電動バスの開発と都市部での活用方法について研究している東京都市大学 都市生活学部 都市生活学科 西山敏樹准教授の講演だ。

電動バスは環境問題とエネルギー問題からのニーズがまず第一にある。自動車が排出するCO2の40%がバスやトラックのディーゼルエンジンから発生しているというデータもある。また、バス・トラック運転手の高齢化に伴い、大型車の安全性、自動運転といった要請もあり、電動化による制御が期待されるところだ。

このように主に行政や政策からのニーズだが、電動バスはこれからの都市計画や自治体の公共交通には欠かせないソリューションであるというのが、西山准教授がこの分野で研究を続ける背景だ。西山准教授が提唱するのは、

「集積台車という車体構造を利用した電動バス。電池、インバーター、コントローラを床下に平たく収めたコンポーネントビルトイン式フレームに8輪のインホイールモーター、タンデムホイールサスペンションを搭載したシャシーに運転席や客席、ボディを架装する。こうすることで、低重心、フルフラット、高効率の電動バスが実現できる」

エンジンに相当するモーターをインホイールモーターにすることで、空間効率を最大にできる。このとき8輪にすれば大型車でも充分なパワーを発揮できるし、全体としても軽量化が見込める。サスペンションは2輪ずつ油圧系を共有することで省スペースと乗り心地とコーナリング性能を確保する。

バスの場合、フルフラットというのがなにより大きい。西山准教授によれば、現在低床バスと呼ばれる車両は、エンジンやトランスミッション、エアコンなど必要なコンポーネントが後部やルーフに集中し、ドア付近は低床になっていても後席との段差が激しい。実際、車内での転倒などもこの段差でよく起きているという。

西山准教授らが開発している電動バスは、自治体の路線バスの走行を分析し、実用に耐えるものを目指している。現在定員は49名。総重量で11.8トン。床面の地上高はバリアフリー対応の270ミリ。1回の充電で121kmの走行が可能だという(標準的な路線バスは1日120kmくらい走行する)。最高速度は60km/hとなっている。

集積台車方式は、設計の自由度も高い。今後は、高速路線バス、ダブルデッカー、海外メーカー製車両の活用(車体サイズが国内と海外で規定が異なる)、リサイクルバスの活用(観光地の特殊設計のバスなどがある)、患者輸送や医療用バスへの応用などを考えているという。

なお、8輪、インホイールモーター、集積台車というと、慶應義塾大学が研究していた「エリーカ」を思い出す人がいるかもしれない。西山准教授はまさにその研究グループに在籍していたといい、乗用車よりバスへの応用のほうが可能性があるとして、この研究を続けているという。
《中尾真二》

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