【インタビュー】ホンダエアクラフト 藤野社長「17年以降、アジア・オセアニアなど新市場にも」

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小型ビジネスジェット機『ホンダジェット』の生産会社であるホンダエアクラフトカンパニー(米国ノースカロライナ州グリーンズボロ)の藤野道格社長はこのほど、同本社で報道陣の共同取材に応じ、今後3年で現有設備でのフル生産に入る方針などを明らかにした。

また、今後の市場展開方針や、航空機技術のクルマの自動運転分野への波及効果などにも言及した。


◆今後3年で年80機のフル生産に

----:現在の生産は月間2~3機ということですが、今後の生産拡大のスケジュールは。

藤野社長:当初の生産拡充計画よりは多少遅れている。たとえば、お客様のパイロットトレーニング(操縦免許)が間に合わず引き渡しが遅れるとか、サプライヤーさんの品質とか、いろいろ事情はある。しかし、これからキャッチアップしていきたい。来期(2017年度)の初めには月4機、来期末には5機に引き上げる計画だ。そして今から大体3年後の18年度から19年度にかけてフル生産の年間80機にもっていきたいと考えている。

----:ホンダジェットの属する小型ビジネスジェット機の世界市場は年200機レベルですが、今後の市場動向をどう見ていますか。

藤野:今年は9月までのデリバリー状況を見てみると、前年比で7.7%のマイナスとなっている。米国の大統領選挙もあったので、状況を見たいという方もいらっしゃった。実務レベルの感覚からすると景気の要素だけでなく、そうしたエモーショナルな要素もあってマイナスに触れているという感じもある。

だが、われわれがフル生産する3年後には徐々に回復していくだろう。さまざまな予測も踏まえ、2018年から20年にかけては300機から350機くらいになると想定している。アップダウンはあるものの10年、20年という長期間で捉えると着実に上がっていく市場だと見ている。

◆単年度黒字化は5年を超えそうだが…

----:ホンダジェットの販売は北米、欧州に次いで11月初めからは中南米での受注も始めました。今後の計画は。

藤野:中南米ではまずパナマ、次はアルゼンチンを考えている。さらに17年から18年にはアジア、オセアニア、中東への展開を考えている。アジアではインドと中国のポテンシャルが非常に高いと見ている。中東ではホンダジェットはハイテクでスタイリッシュなジェット機といった評価もいただいている。

----:15年12月に米国から納入が始まった。納入開始から5年程度で単年度黒字を目指したいとのことでしたが。

藤野:(当初計画より)生産数が6か月くらい遅れていることなどにより、今の状況だと5年をちょっと超えそうという感じだ。(部品の品質など)いろいろな想定外のこともあるが、何とか5年でキャッチアップできるよう、取り組んでいきたい。

◆部品の品質確保に派遣チーム編成など全力

----:部品の品質確保には、どのように対応していますか。

藤野:航空機産業は非常に多くの部品を使っているので、われわれの問題もあるが、どうしても部品の信頼性が重要になる。飛行機の部品の特徴はマイナス40度Cからプラス40度Cまで、気圧は3分の1気圧になっても問題ないといった非常に厳しい条件にさらされる。みなさんが「こんな小さな部品が作動不良を起こすの」と驚かれるようなことが起きる。

ビジネス全体としてサプライヤーさんの品質を上げ、システムとして生産スケジュールに乗せていくというのが、目下の大きな課題となっている。部品については常時5人程度のスペシャリストを置いており、サプライヤーさんに派遣できる態勢をとっている。さらにケースに応じ、設計、品質、生産技術部門からも集中的に派遣チームに加われるようにしている。

また、この地でゼロから工場を立ち上げて、地元の方を採用しているので、全員に飛行機の経験があるわけでない。そうした人たちをトレーニングしながらスキルを上げていくことも重要だ。

----:現在、組み立てには約600人が従事しているそうですが、フル生産時の増員はどの程度になりますか。

藤野: 短期的にはあまり変わらない。飛行機は組み立て作業を重ねるに連れて習熟度が増し、組み立てる時間が少なくなっていく。工数が減少すれば(同じ要員で)多く生産することができる。われわれはできるだけ、今のアソシエイト(従業員)の数を大きく変えることなく、生産変動にも対応していきたいと考えている。

◆航空機の安全信頼性はクルマの自動運転技術にも

----:ホンダは1980年代半ばから航空機に取り組んで来ましたが、自動車メーカーがこの事業を行う意義は。

藤野:たとえば自動車のABS(アンチロッキング・ブレーキ・システム)は、航空機の技術がそのまま応用されている。航空機をやることによってコアテクノロジーや最先端のテクノロジーに取り組むということの、社内へのR&D(研究開発)への波及効果というのはすごくある。

飛行機の安全に対する信頼性は、みなさんが考えているよりはるかにシビアな解析やテストによってシステマティックに保証しなければならない。そうした保証する技術やコンセプトは、これからクルマが自動運転になるといった現在と異なる次元に行くには、航空機レベルの次元での技術がなければできないことだと思う。たとえばシステムとしての極めて高い安全性を、部品レベルからコンポーネントまで統計立てて導き出す技術、そうした技術を社内にもっているというのはすごい価値があることで、(自動運転技術でも)アドバンスな立場に行ける可能性があると思っている。
《池原照雄》

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