廃止まで3カ月足らず…留萌線廃止区間全駅を訪れてみた

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留萌線の終点・増毛駅の構内。休日は列車が到着するたびにマニアや観光客で賑わう。
  • 留萌線の終点・増毛駅の構内。休日は列車が到着するたびにマニアや観光客で賑わう。
  • 4925Dの留萌駅では切り離し作業が行われる。
  • 留萌を出て最初の駅は瀬越(せごし)。日本海を望む風向明媚な駅だ。
  • 瀬越駅から海を眺める。
  • 広いホームと待合室が不釣り合いな礼受(れうけ)駅。平均乗降客数は1人以下。
  • かつては仮乗降場だった阿分(あふん)駅。背後の小学校はすでに廃校に。
  • 海を望みながら進む上り列車。礼受~瀬越間。
  • 隣の阿分駅と比べるとかなり長いホームとなっている信砂(のぶしゃ)駅。付近には住宅が点在するため、平均乗降客数は10人以下という分類になっている。

徒歩で最初に訪れた阿分(増毛町)駅は、国道からやや離れて位置している。箸別と同じく短い板張りのホームと待合室があるだけの無人駅だ。最初に訪れた箸別駅や阿分駅から先の信砂駅、朱文別駅は、国鉄時代、仮乗降場と呼ばれていたところで、全国版の時刻表には記載されない、管理局権限で設置されたものだった。これらは、1987年にJR北海道が発足するのに際して、一斉に駅に格上げされたものの、阿分駅の平均乗降数もやはり1人以下。背後には阿分小学校の建物があって、登下校の小学生のために設置された駅のようだが、同校はすでに昨年3月に閉校となっており、最大の使命が失われたようだ。

次の信砂(増毛町)までは、線路を跨いだところにある稲荷神社や阿分トンネル、信砂橋など、留萌線廃止区間を撮影するには絶好の撮影地が多い。徒歩で移動していないとなかなかわかりにくいポイントだ。ちょうど信砂駅近くの信砂橋に着いたところで、タイミングよく上り列車が差しかかった。ここになぜか北海道放送のテレビクルーが突然現れた。尋ねると廃止に関連した取材ということで、思わぬところで筆者はコメントを求められてしまった。これも非日常化した留萌線のひと駒といったところだろうか。

信砂駅は、国道からかなり離れているものの、住宅もそこそこある集落に位置する。そのため、同じ無人駅でも箸別や阿分に比べると格段にホームが長く、立派な造りに見える。営業距離にしてわずか800m先にある舎熊(増毛町)は、国鉄時代は正式に認知されていた駅で、礼受駅とほとんど同じ構造の貨車駅。この駅はほぼ国道沿いにあり、若干遠いながら、久し振りに海に面した駅という感じだった。

信砂~舎熊間の営業距離が極端に短いのが気になったが、舎熊駅の開業は大正時代の1921年、信砂駅は1963年だから、戦後になってこの付近に住宅が増えだしたのだろう。実際、信砂駅から舎熊駅の間は、海岸地方というイメージにはほど遠い、札幌でもよく見かけるような住宅が点在していた。鉄道が廃止されると、公共交通機関は少し離れた国道から利用することになるから、これまでの鉄道利用者は、暴風雪が吹き荒れる冬場にやや辛い思いをすることになるのかもしれない。

そんなことを思いながら、舎熊駅を出るとさすがに疲労が溜まってきたが、次の朱文別(増毛町)で留萌線廃止区間の途中駅完訪となるので、頑張って先を急ぐ。朱文別駅は国道からやや離れた駅。ここも出自が仮乗降場とあって、短い板張りのホームがあるだけだ。留萌方からは線路が外側にカーブしているので、入ってくる下り列車を撮るとよい絵になるだろう。

朱文別で徒歩移動が終わり、留萌からやってきた増毛行き4929Dに乗り込む。この列車はなんと旭川からの直通で、そのせいか、2両編成の車内は超満員。深川から通して乗ってきた4925Dよりも混雑していた。デッキ付近には前面展望を撮ろうというマニアたちが立ち塞がっていて乗り込むのに少々難渋。留萌線の日常が失われつつある象徴的な光景かもしれない。

旭川からの直通列車であるせいか、一般の観光客も多く、増毛に着くとその大半は折返しの深川行き4934Dへ消えてしまう。その間の8分間、増毛駅構内は慌ただしい大撮影大会に。構内はロープまで張られるほどの物々しさで、ホームで撮影に夢中になっていた人が、いきなり乗ろうとしていた列車が発車しそうになって、あわてて静止するひと幕もあった。

4934Dの次発はおよそ2時間後の19時48分に発車する4936D。その後に舎熊と礼受だけに停車する5922Dという留萌止まりの列車があるが、日曜日は運休なので、4936Dが最終列車となる。並行する沿岸バスは、増毛駅前を18時53分に発車する便が最終となるので、夜が遅くなるとJRだけが頼りになる。今回の廃止容認では、この深夜と早朝の足をどう確保するのかということが焦点になったのだろうが、すでに並行する路線バスが充実しており、その始発と終発を延長するだけで、代替手段は足りると実感した。

《佐藤正樹(キハユニ工房)》

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