交政審、東京圏の鉄道整備案を公表…新線の「ランク付け」行わず

鉄道 行政

4月7日に国土交通省で開かれた交通政策審議会の小委員会。東京圏の新しい鉄道整備基本計画案が公表された。
  • 4月7日に国土交通省で開かれた交通政策審議会の小委員会。東京圏の新しい鉄道整備基本計画案が公表された。
  • 新線や複々線化などのプロジェクトは24路線を盛り込んだが、路線ごとの「ランク付け」は行わなかった。
  • 都区部のプロジェクトは羽田空港関連の新線を中心に盛り込まれた。
  • 横浜・川崎地区は横浜環状鉄道などが引き続き盛り込まれた。
  • 基本計画案による各プロジェクトの名称。
  • 交政審小委員会の家田委員長。「プロジェクトのランク分けではなく、我々が考える各プロジェクトの期待と課題を盛り込んだ」などと語った。
国土交通大臣の諮問機関・交通政策審議会(交政審)は4月7日、「東京圏における今後の都市鉄道のあり方に関する小委員会」(委員長・家田仁政策研究大学院大学教授)を開き、鉄道整備の基本計画案を公表した。

東京圏の鉄道網整備は2000年1月、交政審の前身である運輸政策審議会(運政審)が答申した基本計画(運政審18号答申)に基づいて進められてきたが、同答申の目標年次が2015年だったことから、これに代わる新しい基本計画がまとめられることになり、2014年5月から小委員会での検討が行われてきた。

基本計画案によると、現在の東京圏の都市鉄道は、ネットワークやサービスが「世界に誇るべき水準」にあるとしつつ、都市間の国際競争の激化や訪日外国人の増加、少子高齢化や人口減少、オリンピックの開催決定などによって「取り巻く環境は大きく変化」したとし、空港アクセスの改善や混雑緩和なども「更なる取組が必要」とした。

こうした状況から、基本計画案は「概ね15年後(2030年頃)を念頭」に置き、「東京圏の都市鉄道が目指すべき姿」として「(1)国際競争力の強化に資する都市鉄道」「(2)豊かな国民生活に資する都市鉄道」「(3)まちづくりと連携した持続可能な都市鉄道」「(4)駅空間の質的変化~次世代ステーションの創造~」「(5)信頼と安心の都市鉄道~安全運行を前提とした遅延対策の強化~」「(6)災害対策の強力な推進と取組の『見える化』」を掲げた。

■オリンピック見据えた駅の改善「早急に実施すべき」

「国際競争力の強化」では、空港・新幹線駅のアクセス強化や、国際競争力強化の拠点となるまちづくりと連携して駅や路線を整備することを盛り込んだ。「豊かな国民生活」では、朝のピーク時だけでなくピーク時以外の混雑への対応も盛り込み、他の交通機関も含めた「移動全体のシームレス化」も推進。将来的には情報通信技術(ICT)の進展を踏まえ、改札内外で駅構内を仕切らない駅(ラッチフリー駅)の実現可能性についても検討するものとした。

「まちづくりと連携」では、ユニバーサルデザイン化の推進や、鉄道沿線のまちづくりに向けた関係者の連携強化を盛り込んだ。障害者や高齢者の移動の円滑化では、施設のバリアフリー化のほか事前の情報提供も重要だとした。外国人への対応については、無料の公衆無線LANの整備、情報提供の多言語化などの取り組みが必要とした。

「駅空間の質的変化」では、「駅まちマネジメント(駅マネ)」を推進。駅ごとの関係者が一堂に介して課題の共有や調整を図る「駅まち会議」を設置し、計画・実行・評価・改善を継続的に行う「PDCAサイクル」を実施しながら課題の解決を図ることが重要とした。とくに空港駅や空港アクセス乗換駅などの拠点駅では、2020年の東京オリンピック開催に向け、複数の鉄道事業者が統合して運行情報を提供するなどの取り組みを「早急に実施すべき」とした。

「信頼と安心」では、列車の遅れ対策として「見える化」を推進。まずは遅延に関する「適切な指標」を設定した上で、遅延の現状と改善の状況を分かりやすくすることが重要であるとした。また、国に対しては遅延の発生状況を毎年公表して推移を確認できるようにすること、鉄道事業者に対しては運行実績データの詳細な分析や他の鉄道事業者との比較を行うことで対策を講じることを求めた。

■新線プロジェクトは羽田空港アクセス線など24路線

新線や複々線化などのプロジェクトは、「国際競争力の強化に資する鉄道ネットワークのプロジェクト」と「地域の成長に応じた鉄道ネットワークの充実に資するプロジェクト」として、24路線を盛り込んだ。

このうち「国際競争力の強化」では、押上~新東京~泉岳寺間の都心直結線、田町・大井町・東京テレポート~東京貨物ターミナル~羽田空港間の羽田空港アクセス線、矢口渡~蒲田~京急蒲田~大鳥居間の新空港線(蒲蒲線)など8路線が盛り込まれた。

大半は成田国際空港や東京国際空港(羽田空港)へのアクセス改善を図る路線だが、臨海部~銀座~東京間を結ぶ都心部・臨海地域地下鉄の整備と常磐新線(つくばエクスプレス)の秋葉原~東京間延伸を一体的に行って相互直通運転を行うことや、東京8号線(有楽町線)の分岐延伸線となる豊洲~住吉間の整備、リニア中央新幹線の始発駅となる品川駅から白金高輪駅までを結ぶ都心部・品川地下鉄の整備も盛り込んだ。

一方、「地域の成長」は16路線。埼玉高速鉄道線の浦和美園~岩槻~蓮田間延伸、東京12号線(大江戸線)の光が丘~大泉学園町~東所沢間延伸、多摩都市モノレールの上北台~箱根ヶ崎・多摩センター~八王子・多摩センター~町田各区間の延伸、横浜3号線(ブルーライン)のあざみ野~新百合ヶ丘間延伸などが盛り込まれた。

軽量軌道交通(LRT)など中量軌道の整備については、まずバス高速輸送システム(BRT)を導入し、将来的には中量軌道などに移行するといった段階的整備も「視野に入れるべき」とした。このほか、駅の改良事業として成田空港駅・空港第2ビル駅(二重改札の解消など)、品川駅(京急品川駅の地平化・2面4線化など)、浜松町駅(歩行者通路の整備など)などが盛り込まれた。

■「ランク分けより期待と課題」盛り込む

前回の運政審18号答申では、路線ごとに事実上の「ランク付け」を行い、目標年次(2015年)までに開業することが適当である路線(A1)、目標年次までに整備着手することが適当である路線(A2)、今後整備について検討すべき路線(B)の三つに分けていた。今回の基本計画案では「ランク付け」を行っておらず、整備の優先順位も明確には示されていない。

ただ、各路線の「課題」の項目では「事業計画について十分な検討が行われることを“期待”」といった表現が目立つ一方、「事業計画の検討の深度化を図る“べき”」といった、やや強めの表現が一部の路線で見られる。「べき」の表現が使われている路線は、羽田空港アクセス線、蒲蒲線の一部(矢口渡~京急蒲田)、有楽町線の分岐延伸線、大江戸線延伸の一部(光が丘~大泉学園町)、多摩都市モノレール延伸の一部(上北台~箱根ヶ崎・多摩センター町田)、ブルーライン延伸の6路線のみ。交政審は、これら6路線を優先度の高い路線として考えているものと見られる。

家田委員長は小委員会の終了後、「(運政審18号答申で)ランク分けしたが、その通りにならなかった。それがこの15年の経験。紙の上での形式的なランク分けではなく、我々が各プロジェクトにどういうことを期待しているか、どういうことが課題であるかを(今回の基本計画案で)明確にした」などと述べた。

今回の基本計画の取りまとめに際しては、パブリックコメントが実施される。意見募集期間は4月8日から14日まで。国土交通省の鉄道局都市鉄道政策課が電子メール・郵送・ファクスで受け付ける。基本計画は4月中にとりまとめられ、国交相に答申される見込みだ。
《草町義和》

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