気になるニュース・気になる内幕---今日の朝刊(朝日、読売、毎日、産経、東京、日経の各紙・東京本社発行最終版)から注目の自動車関連記事をピックアップし、その内幕を分析するマスコミパトロール。
2016年3月17日付
●一斉回答、ベア3年連続水準は低調、「非正規」引き上げ、トヨタ社長「潮目変わった」 (読売・1面)
●水素スタンド数4倍計画、25年度までに(読売・11面)
●燃料電池車「30年までに80万台」政府、普及へ数値目標(朝日・11面)
●貸し切りバス、更新制に、国交省、参入3~5年で再審査(日経・1面)
●VW不正発覚半年、自動車業界再編の火種に(日経・6面)
●ガソリン、4週ぶり上昇、店頭価格112.1円、原油相場持ち直し(日経・20面)
●高崎線一部きょう不通、籠原駅で装置焼損(日経・39面)
ひとくちコメント
「ベア3年連続、水準は低調」(読売)、「官製春闘ベア失速」(朝日)、「ベア前年以下相次ぐ」(産経)、「ベア『縮小』6割、企業、慎重姿勢目立つ」。
2016年春闘の一斉回答を受けて、きょうの各紙はネガティブな見出しが際立つ。労使交渉が大詰めを迎えた先週には「トヨタ、ベア2000円超」と、各紙が勇み足で報じてしまった腹いせのようにも受けとれる。
それはともかく、メディアが読み違えたトヨタ自動車の豊田章男社長は労使協議の場で「為替の動向も含め、経営を取り巻く環境の潮目が変わった」と指摘したという。
では、潮目がどんなに変わったのか。相場形成に影響が大きい自動車では、リード役のトヨタがベアに消極的な姿勢を示していたことで、前年の半分以下の回答が相次いだ。
きょうの各紙は主要企業の回答状況を一覧表にして掲載しているが、自動車の場合、ベアについてはトヨタが1500円で決着。次いでホンダが1100円、富士重工業1300円、スズキとマツダ1200円、三菱自動車も1100円などと、1000~1500円のベアが相次ぎ、3000円の満額回答は日産自動車1社のみだった。
このうち、情けないのは富士重工である。アベノミクスによる円安効果の恩恵で今期も過去最高益を更新する見通しであり、しかも売上高に対する営業利益の割合は17%を超えるという。最高水準といわれるトヨタ自動車の10%も大きく引き離す快進撃を続けている。
それなのに、ベアは1300円と慎重だ。7月からトヨタの完全子会社になる業績不振のダイハツ工業(1500円)よりも少ない。
それでも満額回答した富士重工の年間一時金(6.5カ月)は自動車大手ではトヨタ(7.1カ月)に次いでいる。ただ、一時金のベースとなる富士重工の基本給は業界の中でも低い水準。ちなみに、富士重工の平均年収は38.3歳で643万円、トヨタは39.1歳で838万円と、200万円近い差がある。
「トヨタに次ぐ」といっても、多いのは月の数。ボーナスが増えることで一時の生活は潤うが、基本給が低い水準のままでは社員の士気の高揚にはつながらない。
円安の恩恵を十分過ぎるほど受けた富士重工の控えめの回答例をみても「官製春闘」は勢いを失い、「安倍政権の経済政策はほころびを見せつつある」(東京)との見方もあるほどだ。