試乗はモトクロスコースの一部、ダート路を含む林道、ワインディング、市街地でおこなったが、まず言いたいのは、リッターエンジンを搭載する大柄なマシンにしては、オフロードでの走破性が高いということ。
最近のアドベンチャーモデルは、オンロード寄りといえるものがほとんどだが、新しいアフリカツインはダートを疎かにしていない印象。スペックを見ても、前後サスのストローク量、250mmの最低地上高はクラストップクラスだ。
クローズドのモトクロスコースにはジャンプやタイトコーナー、急坂もあり、最初は恐る恐る走ったが、周回を重ねるうちに「もっといける」という感覚に。
ジャンプでは着地後にリバウンドを食らってバランスを崩すのでは…という心配をよそに、前後サスが衝撃をしっかり吸収してくれるので、どんどん距離を伸ばせるし、コーナーではイメージ以上にフロントタイヤが近くに感じられクイックに曲がることができる。
そして急坂では、アクセルをワイドオープンしてリアが流れ出してもエンジンの出力特性がフラットなのでコントロールしやすい。リアを振りながらも、フカフカのサンドに負けず力強く坂を駆け上っていく。
DCT仕様もラインナップされるが、その恩恵を強く感じたのが林道。雪や凍土の残るスリッピーなダートでも、半クラなど不要というのが素晴らしい。オートマチックに選択されるギヤ段数も違和感はなく、乗り手はただただアクセルワークと車体コントロールに集中していればいい。
ワインディングも軽快で、オンロードも気持ちがいい。270度位相クランクを採用したパラレルツインはトラクション性能に優れ、スロットルレスポンスも過激すぎず程良い。
ウインドプロテクションも効果的に効いていて、スピードレンジが上がっても走行風をまともにくらうことがなく、ロングライドでも疲れにくい。
『CRF1000L アフリカツイン』は「これ以上はやめておこう」と引き返していた、その先へ入っていけるダートでの走破性を持ちつつ、高速移動を含めたオンロードでのツアラーとしての資質も備えている。
■5つ星評価
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★
コンフォート:★★★★
足着き:★★
オススメ度:★★★★★
青木タカオ|モーターサイクルジャーナリスト
バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。国内外のモーターサイクルカルチャーに精通しており、取材経験はアメリカやヨーロッパはもちろん、アフリカや東南アジアにまで及ぶ。自らのMXレース活動や豊富な海外ツーリングで得たノウハウをもとに、独自の視点でオートバイを解説。現在多くのバイク専門誌、一般誌、WEB媒体で活動中。