日本の自動車産業にとって、現地生産、現地販売の「地産地消」は今や常識だ。海を越えて完成車を運ぶ悠長な時代は過去のものだが、そうした事実も太平洋を隔てると、なかなか更新されるものではないのか。
その発言が常に挑戦的なアメリカ大統領選の共和党立候補者ドナルド・トランプ氏が、出馬表明演説でやり玉にあげたのが日本の自動車産業だった。
「日本は米国に何百万台もの車を送ってくるが、東京でシボレーを見たことがあるか。我々は日本人には叩かれっぱなしだ」(15年6月16日)
トランプ氏の認識の程度は不明だが、こうしたアメリカに根強く残る誤解を地道に解こうとしているのが、日本自動車工業会が発行する『Investing in America』(アメリカへの投資)だ。年次貢献報告と副題がついたレポートはカラー19ページで、豊富なイラストや図表を使って、日系自動車メーカーのアメリカでの活動をわかりやすく解説している。
このレポートが記載している大きな項目は2つ。日系企業の米国内での雇用と投資・生産状況と、アメリカ国内からの海外に向けた自動車輸出の状況だ。これによると、日系企業は全米で149万人の雇用を創出して、その総投資額は431億ドル。14年度1年間で米国製部品を660億ドル購入して完成車を組み立て、さらに米国から47万2000台を輸出している。
初めてのレポートが作成されたのは、日米構造協議が実施された3年後の1992年のことだ。それ以後、毎年日系企業の活動を伝え続けている。この時期のアメリカは日本の自動車市場開放を激しく迫った。
米国の議会関係者や省庁、メディアを対象に配布されるため、記載はすべてが英文。自工会の英文ウェブサイトに掲載されている。日本語サイトの最新情報のリンクからたどることができる。