ヤマハ『MTシリーズ』は速さではなく、マシンを自由自在に操る楽しさを追求している。その扱いやすさの可視化こそ、デザインにおける“MTシリーズ”らしさだと、ヤマハ発動機デザイン本部 製品デザイン部の安永稔之氏は考えた。
『MT-03』『MT-25』をデザインするとき、それを具体的に落とし込んだキーワードが「マスの集中化」や「クロスレイヤード構造」、それに「クロスムーブメントデザイン」の3つだ。
マスの集中化とは、主要パーツを可能な限り車体の中心に集め、運動性能とコンパクトな車体を求めたもの。MT-03、MT-25では、タンクは前部のタンクカバー部、サイドのニーグリップ部、その下を流れるエアインテークの3つの機能パーツが重なり合うクロスレイヤード構造でマスの集中化を表現。機能とスタイルを両立させている。
注目はガソリンタンクで、『MT-07』と同じくインナータンクを採用。ガソリンタンクに見える部分は樹脂製のタンクカバーとなっていて、デザインの自由度を高めることに貢献した。
そのタンクカバーは跨ったときに、乗り手が左右への連続性を感じさせる形状になっていて、クイックなハンドリングを連想させる。これが「クロスムーブメントデザイン」で、横から見るだけでは分からない、シートに座ったときに初めて感じる躍動感を生み出すことに成功している。
また、内燃機がパワーを生み出す空気の流れを“Z”のラインで表現するMTシリーズのアイコンも受け継いだ。
そして、スペース的にも重量的にも、徹底した軽量化と合理化が図られているなか、アンダーカウルを装着しているのも興味深い。
これについて安永氏は「“都会のチーター”というコンセプトにふさわしい筋肉感や機械が持っている迫力を表現したかったからです」と言う。
安永氏はMTシリーズのほか、新型『YZF-R1』のデザインも担当した。