【ボルボ V60 ディーゼル 試乗】音までチューニングしているとしか思えない…中村孝仁

試乗記 輸入車

ボルボ V60 D4
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ドイツでもない、日本でもない、第3のディーゼル…というTVCMが、かなりインパクトをよんでいるボルボのディーゼル。5車種も一気に出して来たので、同じエンジンだが順番に乗っている。今回は『V60』だ。

全世界で総販売台数が50万台以下だから、ボルボは決して大きなメーカーではない。そうしたメーカーは極力、同じエンジン、同じシャシー、同じデザインコンセプトで個々のクルマというよりも、ブランドの訴求力を向上させた方が有効だ、ということを言ったとあるCEOがいた。実際にそうだと思う。今のボルボを見ていると、まさにそれを実践している。

新しい「Drive-Eエンジン」はボルボ全車に共通だし、プラットフォームも現在日本で販売しているモデルに限ってみれば、ベースはすべて同じである。デザインモチーフとコンセプトも、ハッチバック、セダン、SUVに至るまですべて統一感があって、誰が見ても一目でボルボと認識できる。インパネデザインも基本同じ。

人によっては見分けがつかなくて嫌というが、話をしてくれたCEOによれば、かつて小さなメーカーでありながらバラバラなクルマ作りをして大失敗したことがあるのだという。その小さなメーカーとはポルシェ。そして失敗の元となったのは、第3世代と言われた1970年代の『924』や『928』の投入。そしてそのCEOとは、ポルシェからアストンマーティンに移籍してCEOとなったウルリッヒ・ベッツ氏だ。

ボルボは今、クルマ作りの統一感があって非常にうまくいっている。V60は確かに昔のボルボワゴンのような実用性や機能性とは異なる進化を遂げている。そもそもV60のVは、versatileのV。訳せば多芸とか多目的という意味で、正直言えばV60はそれほどversatileとは思わないのだが、容量は小さくとも40:20:40分割可倒式のリアシートアレンジはそれを補う効果もある。

でもって、件のディーゼルだ。基本的には5車種すべてに共通だから、性能面での違いはシャシーセッティングと車重の違いで多少変わる程度で、すでに試乗を終えた『V40』、『XC60』と大きく変わるところはない。

今回はおおよそ300kmほどを走ってみた。試乗会とは違って、近場の買い物から片道100km弱の高速道路の移動などを含む。試乗会で感じたのは、車外放出音が大きなことだった。つまり外で聞いているとディーゼル特有のガラガラ音が大きいということで、これはBMWディーゼルにも共通する。一方で圧縮比をグンと下げたマツダのディーゼルと、エンジンルームをまるで城壁で囲んで要塞のようにしたメルセデスは車外放出音が小さい。

ところがマツダを除くヨーロッパ系のディーゼルは、一旦走り出してしまうとそれがガソリン車なのかディーゼルなのかわからなくなる。マツダの場合、それが『アテンザ』であっても車速が低い場合はまごうこと無きディーゼル音が明確に耳に入る。特にコンパクトな『デミオ』の場合、ディーゼル透過音は明確に室内に侵入してくる。勿論、BMWだってボルボだって透過音はそれなりなのだが、本当に低速域からそれが明確なディーゼル音だとはわからない。

と、ここに至り、ヨーロッパのメーカーはどうも明らかにサウンドチューニングを施しているのではないか? という結論に行きついたのだ。少なくともBMWの場合は、チューニングしていないエンジンサウンドはないと言われる。どうもボルボもそれをやっているような気がしてならない。だから、加速時でも特有のガラガラいう音とは少し異質なガソリンエンジンともまた異なるサウンドに仕上がっている。

定常状態では室内騒音は全く気にならないし、果たしてそれがガソリンなのかディーゼルなのかもわからない。しかし、日常的に使う速度域でパーシャル状態から加速を始めると、400Nmというとてつもないトルクが乗員をシートに押し付ける力強さを見せるのはさすがターボディーゼルだ。300km走った燃費はおおよそ16km/リットルほど。その前に乗ったXC60では条件も良かったのか、18Km/リットルと非常に優秀。しかも今軽油の値段は、場所にもよるが我が家のそばは91円と格安。ハイオクとの間には実にリッターあたり45円もの差がある。

心地よいというのは、なにも快適な乗り心地や、リラックスできるシートだけで醸成されるものではない。不可避的に発生する音の処理も重要。特にディーゼルの場合はそれが重要で、昔からディーゼル車が実用車として幅を利かせてきたヨーロッパのメーカーはそのあたりがわかっているような気がする。この点の差は、日本のディーゼルと大きな違いがある。

■5つ星評価
パッケージング ★★★★
インテリア居住性 ★★★★
パワーソース ★★★★★
フットワーク ★★★★
おすすめ度 ★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来37年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。
《中村 孝仁》

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