“ダメージカー”を買い取ってもらう、という選択肢…タウ・コーポレーションの取り組み

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川崎にある事故車をプールするタウのヤード。すごいクルマも買い取られてくる。
  • 川崎にある事故車をプールするタウのヤード。すごいクルマも買い取られてくる。
  • さいたま市にあるタウの本社内部
  • リユースが決まり修復されて、実際に現地の人に使われている事例
  • このマーチはチリのユーザーのもとに届けられた。
  • こちらは実際の買取り事例。修理見積もり135万円のメルセデスを70万円で買い取った。
  • ここまで壊れているクルマも、このままの状態で輸出される
  • そして現地でご覧のように修復されるのだ。

ダメージカーという聞きなれない言葉がある。つまりはダメージを受けたクルマ。簡単に言えば事故車なのだが、単にそれだけではなく、最近よくあるのゲリラ豪雨で水没したり、災害で損傷を受けたクルマなどもダメージカーなのだ。

事故車の場合は、その程度によっては修復も可能。しかし、災害によって損傷を受けたり、水没したとなると通常は廃棄処分である。ところがそんな廃棄されるクルマを買い取ってくれるという有り難い事業があるのだ。こうした事故車、損傷車の買い取り業務をする会社は日本にいくつか存在する。今回取材をしたのはタウ・コーポレーションという国内ではトップのシェアを持つ会社だ。

水没あるいは災害による損傷を経験したユーザーは少ないと思うが、事故の経験があるというユーザーは多いだろう。事故を起こしてしまったら、まずは保険屋を呼び、その後の対応は保険屋任せというケースがほとんどだと思うのだが、修理見積もりが大きかったり、あるいは車両保険に入っていなかった結果、全額自己負担などという経験を持つユーザーもいるだろう。実際車両保険未加入のユーザーは全体のほぼ半数に上るというから、驚かされる。

さて、上のようなケース、今までだったら保険屋もしくは修理工場に言われるがままにクルマを処分していたと思うのだが、少し積極的になって、自分で売り先を探すというひと手間を加えると、思ってもみなかった結果が出るかもしれない。

いくつかの事例で紹介すると、エンジンは生きているものの、自力走行が出来なくなったメルセデスベンツ『Cクラスステーションワゴン』、修理見積もりが135万円のところ、タウでの買い取り金額は70万円。見積金額を全額カバーするような保険にでも入っていれば助かるが、なかなかそうはいかない。かといって廃車は忍びない。そんな時このダメージカー買取りが役立つというわけである。当然保険に入っていれば、修理せずに保険を受け取って、廃車寸前のクルマを買い取ってもらえば、次のクルマ購入の資金にもなるわけだ。

ではこうしたダメージカーを買い取った業者は一体どうするのか。タウの場合、独自の判定基準によってこれが修復可能か否かを判定し、可能と判断した場合は独自の流通経路で海外に輸出する。しかも修復せずに。修復不能の場合は解体の後パーツとして流通させるか、さらにひどい場合は資材として流通させるのだという。こうした再利用方法の選択を同社では「カー・トリアージ」と呼んでいる。つまりダメージカーはリユースされるか、リサイクルに回されるかの分かれ道がここで決まる。

リユースされるのはまず海外だ。何故か。それは世界には日本人とは異なる価値観を持つ人々が多く存在するからに他ならない。それに完ぺきを求める日本人と違って、まだまだモータリゼーション発展途上にある国では、例え事故車であってもそこに大いなる価値を見出す人が多く存在し、しかも現地で見事に修復する技術を持っているということである。

タウは世界110か国に販路を持ち、いったん買い取ったクルマのリユースが可能となると、それをインターネットを通じて会員となっている顧客(企業が大半)に情報を流し、オークション形式で販売するのだという。買い取られたクルマは輸出され、現地で見事に修復されて、第2の人生ならぬ車生を生きるのだ。会員となっているタウの顧客は10万社に上る。

査定に出したものの、結果はゼロ。そんな経験をされたことのあるユーザーは、一度こうしたダメージカー買取に相談してみると、予想外の結果が得られるかもしれない。

《中村 孝仁》

中村 孝仁

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員 1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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