軽自動車がけん引して3月末は7708万台に
「ホント?!」という声があがりそうだが、クルマ社会のストック状況を示す「自動車保有台数」がここ3年、最多を更新し続けている。日本はすでに人口減局面に入っているにも拘わらず、乗用車がけん引して自動車保有はなお増加中だ。中長期的には保有減が必至だが、ここ数年は拡大が持続する勢いにある。
自動車検査登録情報協会が集計した2015年3月末時点の自動車保有台数(二輪車除く)は、7708万台で前年同期を0.5%上回った。13年から3年連続での最多更新となる数字だ。このうち乗用車は0.8%増の6052万台、貨物車(バスを除く)は0.1%減の1465万台だった。乗用車のなかでは軽自動車が3.9%増の2103万台と伸ばしたのに対し、登録車は0.8%減の3949万台と小幅ながら減少した。軽自動車は新車販売の4割を占めるに至っており、販売台数も13年、14年と2年続きの過去最高になり、乗用車保有の拡大を支えている。
乗用車と貨物車=トラックの保有トレンドは対照的だ。トラックはバブル経済崩壊の1991年にピークを迎えた後、92年から今年まで一貫して減少している。一方の、乗用車は1970年代の2度のオイルショックも、バブル崩壊も、08年のリーマン・ショックもモノとせず、戦後一貫して増加している。平成の始まりである89年に3000万台に達し、その25年後の14年には6000万台に倍増した。
◆すでに人口減少なのに減らない乗用車
こうした戦後70年にわたって右肩上がりを続ける乗用車の保有台数は、(1)可処分所得の向上による普及拡大(2)高品質な製品供給による保有期間(車の平均寿命)の長期化(3)交通手段としての必需品化と交通インフラの整備(4)女性ドライバーの飛躍的増加――といった複合要因によって支えられてきた。
日本など自動車の普及が高度に進んだ国で、保有台数を左右する最大の因子は人口となる。総務省の調査によるわが国の人口(各年10月時点、推計含む)は、11年から13年まで3年連続で減少しており、すでに少子化による人口減の時代に入った。にも拘わらず、自動車とりわけ乗用車の保有台数は増え続けている。あたかも為替変動と貿易収支の変化に時差が生じる「Jカーブ効果」のような現象が起きているのだ。
死亡するのは高齢の方が多いので、すでに自動車は運転していない、あるいは保有していない人が多い。このため、人口が減少しても直ちに保有台数の減少にはつながらないという仮説が成り立つ。しかし、乗用車の保有は、なお増え続ける方向にある。Jカーブ効果のような仮説だけでは説明がつかない。そこで考えられるのが、日本の乗用車普及は「まだ飽和状態に至っていない」という視点だ。と言うと、販売部門を中心とする自動車業界関係者からは「とんでもない」と指摘されそうだ。
◆フランス並み保有なら乗用車は2020年も今より増える
新車販売のピークは90年の777万台であり、最近では年間500万台に達すれば「健闘した」という状況になっている。確かに新車販売という「フロー」は飽和状態にある。それでも保有台数という「ストック」は増加し続けており、乗用車保有が飽和状態にないとの見方ができる。国土面積や経済力などが似通っている欧州先進国と比較してみよう。13年末現在の人口1000人当たりの乗用車保有台数はドイツ534台、英国510台、フランス492台などとなっている。
これに対して日本は472台であり、欧州諸国よりは少ない。仮にフランス並みの492台までは増え続けるとすると、しばらくは人口減を乗り越えて保有増が続くことになる。総務省による20年の日本の推計予測人口を元に1000人当たり492台という割合で試算すると、同年の乗用車の保有台数は6106万台となる。
あくまで机上の数字だが、今年3末時点(6052万台)よりは、なお多くなる。ただし、人口減の加速によって保有台数の減少は必至だ。当然のことながら、整備需要や税収、保険料などクルマのストックがもたらす経済波及力は細っていくので、関係業界には今から備えが求められる。