【シボレー コルベット Z06 試乗】ヨーロピアンブランドの脅威になる…山崎元裕

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シボレー コルベット Z06
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驚異のスーパースポーツが、アメリカに誕生した。第7世代のシボレー『コルベットC7』に、昨年追加設定された、ハイパフォーマンス仕様の「Z06」がそれだ。

先代コルベット(C6)にも、このZ06はラインナップされていたが、新型は搭載されるV型8気筒OHVエンジンを、自然吸気からスーパーチャージャー付きに変更してのデビュー。つまり直接比較するべきは、同じC6世代ならば、Z06ではなく、やはりスーパーチャージャー付きエンジンを搭載した「ZR-1」ということになるのだろう。

新型Z06のV8エンジンは、6.2リットルの排気量を持つLT4型で、最高出力&最大トルクは650ps&881Nm。C6世代のZR-1が搭載していたLS9型と比較すると、若干コンパクトな、しかしながら高回転型のスーパーチャージャーを組み合わせているのが特徴となる。組み合わせられるミッションは、7速MTと、新開発となる8速ATのチョイスが可能。クーペとコンバーチブルの両ボディーが用意されるのも、新型Z06では大きな話題だ。

今回メインに試乗したモデルは、クーペの7速MT仕様。さらにサーキット走行へとフォーカスし、カーボンセラミックブレーキや、ミシュラン製のカップ2タイヤ、あるいは大型の可変式リアスポイラーなどから構成される、パッケージオプションの「Z07」を装備したモデルだ。C7コルベットのスタンダードモデル、「スティングレイ」には「Z51」のパッケージオプションが用意されているように、カスタマーのチョイスで、さらに走りを魅力的なものへとアップグレードできるのは嬉しい。

フロントのV8エンジンから、650psものパワーが生み出されるZ06の加速は、まさに圧巻の一語に尽きる。1速や2速、あるいは3速でも、ドライバーは強烈なGとともに、後輪がグリップを失う恐怖と常に戦いながらの加速を強いられる。Z07のアイテムのひとつであるカップ2タイヤは、もちろんそのドライグリップは圧倒的だが、さすがにこれをウエットコンディションで使うのは、個人的にはできれば避けたいシチュエーションだ。

アルミニウムをメインマテリアルとするシャシーは、このパフォーマンスにも十分な許容力を持つ。サスペンションはマグネティックライド、すなわち磁性変化を利用した減衰力可変型のダンパーが装着されるが、それとともにステアリングやアクセルレスポンス、トラクションコントロール、スタビリティコントロール等々の制御は、セレクターによって、「ウェザー」、「エコ」、「ツアー」、「スポーツ」、「トラック」の各モードが選べる。

ツアーからはさらにトラクションマネージメントによって、「ウエット」、「ドライ」、「スポーツ1」、「スポーツ2」、「レース」の選択が可能。もちろんサーキットで最も魅力的なのは、トラックとレースの組み合わせ。スタビリティコントロールはカットされてしまうが、トラクションコントロールの機能はキープされるから、ダイナミックさとともにインテリジェンスなフィーリングを感じながらの、ホットラップを楽しむことができる。

Z07パッケージを装備したZ06は、完璧なるサーキットスペシャルだ。正確さとともに常にナチュラルな印象に終始するハンドリング。そしてスティングレイよりもさらに魅力的になったエアロダイナミクス。ステアリングに備わるパドルは、7速MTにレブマッチの制御を介入させるためのスイッチだが、その制御が入ればコーナーの進入時には、ブレーキとステアリングの操作により意識を集中させることができる。

ヨーロピアン・スーパースポーツの、デュアルクラッチミッションより、シフト速度は速いとエンジニアが胸を張る、新開発の8速ATの動きも、確かに素晴らしいものだった。とりわけシフトアップの速さは印象的だが、基本はオーソドックスなトルコン式であるため、アクセルレスポンスに、一瞬の遅れを感じるのは致し方ない。やはりZ06は、Z07と7速MTをチョイスして乗るべきモデルだろうというのが結論である。

これほどまでに魅力的なアピアランスとパフォーマンスを誇るスーパースポーツが、はたしてヨーロッパにどれだけ存在するというのか。コルベットZ06の誕生は、ヨーロピアンブランドには大きな脅威となりそうだ。注目されるのは、シボレーははたしてこの先に、新世代のZR-1を用意しているのかどうかということ。個人的には、もちろんそれにも大きな期待を抱いてはいるのだが。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★

山崎元裕|モーター・ジャーナリスト(日本自動車ジャーナリスト協会会員)
1963年新潟市生まれ、青山学院大学理工学部機械工学科卒業。少年期にスーパーカーブームの洗礼を受け、大学で機械工学を学ぶことを決意。自動車雑誌編 集部を経て、モーター・ジャーナリストとして独立する。現在でも、最も熱くなれるのは、スーパーカー&プレミアムカーの世界。それらのニューモデルが誕生 するモーターショーという場所は、必ず自分自身で取材したいという徹底したポリシーを持つ。

《山崎 元裕》

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