ダンロップからスタッドレスタイヤ「WINTER MAXX」シリーズの第3弾『WINTER MAXX SV01』が発売された。
このタイヤは商用ワンボックス向けのスタッドレスタイヤで、氷上ブレーキはもちろんのこと、操縦安定性の向上やタイヤライフにも目を向けているのが特徴だ。具体的には、先代モデルとなるDSX‐01と比べ氷上ブレーキ性能で14%アップ。タイヤライフも1.5倍に伸びており、安全性・経済性を重視するビジネスユーザーにとっては注目の新型冬タイヤだ。
◆「ナノフィットゴム」と「MAXXシャープエッジ」で氷上グリップと操安性向上
試乗の印象を述べる前に、性能の詳細に触れたい。コアテクノロジーとなっているのは乗用車用WINTER MAXXと同様、「ナノフィットゴム」と「MAXXシャープエッジ」の採用だ。コンパウンドは、水分を弾いて氷とタイヤを密着させる、撥水コンパウンドが基盤技術として採用されている。ナノフィットゴムは高密度シリカに軟化剤を加えたコンパウンドで、シリカのネットワークによってマクロレベルでの剛性を確保しながら、軟化剤によってミクロの柔軟性を両立。ブロックの(過度な)変形を抑えながら、微細な凹凸に追従してグリップ性能を高めた。
MAXXシャープエッジは、極細溝であるサイプの溝幅をさらに25%薄くした技術。これによってサイプで切り分けたブロックの大きな変形を支えながら、エッジを効果的に効かせることができるようになった。同時にブロック剛性を高くできるので、サイプを増やすことができ、エッジ成分の増加にもつながっている。
トレッドデザインは、DSX‐01がブロックパターンであったのに対し、SV01はセンター部をリブ化(つなげて)してエッジ成分を17%増加。タイヤプロファイル(タイヤの断面形状)にも工夫を加え、接地面積は接地幅の拡大と接地長の拡大が図られており、従来比19%アップしている。センター部の接地長を長くとった接地面形状で、接地面圧分布も均等になるよう設計された。
また接地面積の拡大は、雪上やドライ路面での操縦安定性アップに寄与。当然のことながら氷上グリップ性能の向上にも効果がある。
◆経済性と安全性での両面でバランス光る
SV01に試乗してまず感じたのは、良い意味で“普通に”グリップするということだ。商用バンは荷物を載せ距離を図るためロングライフ性を重視したコンパウンド、すなわち「硬いコンパウンド」というイメージがあり、性能を向上させたとは言ってもそれなりの性能だろうと思っていた。
ところがいざ走らせてみると、全く同じとは言わないまでも氷上も雪上も普通に走れるのだ。特に圧雪路でのSV01は、トレッドパターンが上手く機能しているのか、ハンドルの効きがよく、しかも応答の遅れが少ないのでハンドルを操作したとおりにノーズが向きを変えてくれる。
圧雪路でハンドルを切り出した時の印象は、縦溝やタイヤショルダーのエッジがうまく機能して、グッと踏ん張る感じが出ている。そのためカーブを曲がっていてもエッジを立てる感覚を味わうことができる。これは特にフロントタイヤに強く感じられることで、これがハンドルを切り出した時の大きな安心感につながっているのだろうと思う。ケース (タイヤの骨格) 剛性が高く、トレッド面全体の剛性も高いので、タイヤの動き(滑り)が予想しやすいことも好感が持てる。
氷上では、もちろんコンパウンド変更という要因もあるのだろうが、接地面を拡大したことの効果がそのままグリップ性能の向上となって表れていると感じた。
グリップ限界を超えてからは、グリップレベルとブロック剛性が高いため氷の路面にこすれるような摩擦感を残しながら滑る。さすがに絶対的なグリップ力でいえば乗用車用には敵わないが、このグリップ性能を実現しながらタイヤライフを1.5倍に向上したというバランスの良さは評価できる。
このタイヤを履くのが仕事でクルマを使うプロフェッショナルであることを考えれば、グリップの余裕を安全マージンとして使うことは難しくないだろうし、何よりインフォメーション性の良さは運転のしやすさになり、大きな安心感につながるはずだ。プロフェショナルドライバーだけでなく、すべてのバンユーザーに薦められるスタッドレスタイヤだと言える。