鉄道のルポやエッセイで知られる作家の種村直樹さんが11月6日20時43分、転移性肺がんのため死去した。78歳だった。葬儀告別式は11月12日10時30分から12時まで、スペースアデュー(東京都台東区、東京メトロ日比谷線入谷駅から徒歩5分)で。喪主は妻の由子さん。
種村さんは1936年3月7日、大津市生まれ。京都大学法学部を卒業後、毎日新聞の記者として鉄道を中心に担当した。1973年4月にフリーの「レイルウェイ・ライター」として独立。鉄道誌の「鉄道ジャーナル」(鉄道ジャーナル社)などで多数のルポを発表し、国鉄のローカル線廃止や分割民営化など、1970~1990年代の鉄道変革期を緻密かつ詳細に描き出した。
その一方、鉄道を移動の手段としてだけではなく、鉄道旅行自体を楽しむためのさまざまな方法を提唱。切符の買い方など鉄道旅行のテクニックをまとめた「鉄道旅行術」(日本交通公社出版事業局)や「周遊券の旅」(実業之日本社)はロングセラーになった。
自宅の住所を自著で公開し、鉄道に関する質問を手紙で受け付けていたことでも知られる。質問の手紙を送ってきた人に対しては必ずといっていいほど返信し、その一部は鉄道旅行誌「旅と鉄道(旧)」(鉄道ジャーナル社)の質問コーナー「種村直樹の汽車旅相談室」で採用して誌面で回答するなど、読者との交流を重視していた。
「鉄道ジャーナル」や「週刊東洋経済」(東洋経済新報社)などで活躍している鉄道ライターの土屋武之さんも、種村さんの「薫陶を受けた」読者の一人。「中学から高校にかけ、種村さんと10回ほど手紙のやりとりがあった。今でも『種村さんなら、どういう風にまとめるんだろう』と考えながら記事を書くことがあります」と話した。