【ルノー クリオエステート 欧州1400km試乗】長距離で見えた0.9リットルエンジンの真価とシャシー性能…井元康一郎

試乗記 輸入車

ルノー クリオエステート
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日本では『ルーテシア』の名で販売されているルノー『クリオ』。欧州では5ドアのほか、後部を延長してカーゴスペースを拡大したステーションワゴン「エステート」が存在する。そのクリオエステートを駆ってオーストリア、スロヴァキア、ハンガリーをまたいで1400kmほどドライブする機会があったのでリポートする。

AVISレンタカー・ブラチスラヴァ空港営業所で引き渡されたクリオエステートは、クルーズコントロールやスマートフォンを接続できるメディアセンターなどを装備する中間グレードの「ZEN」。搭載エンジンはディーゼルではなく直列3気筒0.9リットル直噴ガソリンターボ。欧州市場で急速に増えつつあるダウンサイジングエンジンである。スペックは最高出力90馬力、最大トルクは135Nm(13.8kgm)と、おおむね1.3リットル級の自然吸気エンジンに相当。変速機はこれまた欧州で主流になりつつある6速ではなく、プリミティブな5速MT。中欧としては季節はずれの暖かさであったことからエアコンはほぼ常時ON、2名乗車という条件で走行した。


◆スタイリングと引き換えに手に入れたCセグメント並みのユーティリティ

まずはスタイリングから。マツダから移籍したチーフデザインディレクター、ローレンス・ファン・デン・アッカー氏が進める新世代ルノーデザインの文法に沿った、躍動感にあふれるものだ。とくにサイドビューの深く有機的な抑揚は、Bセグメント離れしているように感じられた。ただ、原型の5ドアモデルに比べると、ワゴン化のために延長されたリアセクターがぼってりした印象を与えるのも事実。リアクオーターウィンドウのグラフィック、フェンダーの張り出し、テールランプの造形など、5ドアが持っていた素晴らしいテンションが少なからず失われ、没個性的になっているように見受けられた。

デザインと引き換えに手に入れたのは、5ドアに比べて格段に高まった貨物の収容能力だ。カーゴルームには床面と開口部の段差をなくす丈夫なボードが取り付けられているが、それを取り外すと深々としたスペースが出現する。長期旅行用の大型トランクを2個と、大き目のリュックサック、ボストンバッグ2個を、リアシートを倒さないまま楽々と積むことができた。上面のトノカバーを使用しないのであれば、3人が長期旅行を行うことも可能だろう。ユーティリティは1クラス上のCセグメントに近いと言える。


◆0.9リットルエンジンのドライブフィール

次にドライブフィール。アウトバーンの最高速度が130km/hに制限される3国でドライブするかぎり、エンジンパワーは必要十分であった。5速で100km/h巡航時のエンジン回転数は2400rpmと、5速MT車としてはハイギアード。アウトバーンでは100~130km/hでの加減速の柔軟性が強く要求されるのだが、クリオエステートの直噴ターボエンジンは過給の立ち上がりが素早く、5速に放り込んだままスロットルの開度を微妙に調節するだけで、思うがままにクルーズすることができた。ノイズや振動も、フォードの1リットルダウンサイジング3気筒に比べるとやや劣るものの、十分に対策がなされており、高回転まで回す時以外は、3気筒であることを意識させられることはほとんどなかった。

高速クルーズ時の燃費は、ディーゼルに比べると速度域によって変化がやや大きめに出る。都市部を100km/hでクルーズするときは、瞬間燃費計の数値は100kmあたり4リットル、日本風の表記では25km/リットルをはさんでうろうろするというイメージ。120km/hまでは目立って悪化することはなかったが、130km/h付近だとおおむね15km/リットル程度に落ちる。2年前の同じ時期に、1クラス上の旧型シトロエン『C4』の1.6リットルターボディーゼル(110馬力)が、飛ばし屋の多いオーストリア~ハンガリーの最速車線の流れに乗って走った際に、23km/リットル前後であったのに比べると見劣りするものの、のんびり走るぶんにはガソリン代のストレスはきわめて小さいと言える。


◆良路や田舎道で発揮される上質なシャシー性能

乗り心地やハンドリングなど、アウトバーンでのシャシーの質感は、こと良路区間においてはBセグメントコンパクトとしては標準以上のフラット感を示した。路面のうねりに対するサスペンションの追従性も良い。しっとりとしたタッチという点ではBセグメントのトップランナーであるフォード『フィエスタ』にやや劣るが、ステアリングの応答性はクリオエステートが優れるなど、一長一短といったところで、欧州域内の長距離移動への適性は基本的に高い。

ただ、乗り心地については老朽化路線や工事区間など荒れた路面に差し掛かるとやや減点幅が大きくなる。サスペンション上部に装着され、振動を吸収する役割を担うアッパーマウントラバーが鋭いピークの衝撃を抑え込みきれず、ガタン、ガタンという低質な衝撃が伝わってくる。タイヤは195/55R16サイズのコンチネンタル「コンチ・エココンタクト」という省燃費モデルが装着されていた。これをもう1段階、快適性の高いものに替えて試してみても面白そうだった。

欧州での一般道走行は、クリオエステートの最も得意とするステージであった。制限速度はオーストリアが100km/h、ハンガリーとスロヴァキアは90km/h。結構なタイトコーナーや隘路、舗装が荒れまくりの田舎道でも、交差点、合流点、市街地など道路交通法に基づく箇所以外、道路状況による速度規制は基本的にない。自己責任で事故を起こさないよう走れということで、シャシーの資質が厳しく問われるところだ。クリオエステートは良路の多いオーストリアだけでなく、舗装がボコボコに荒れたスロヴァキアやハンガリーの田舎道でもBセグメントとしては十分に高い快適性を示した。たとえば、スロヴァキア西部のトルナヴァからベートーヴェンがピアノソナタ「悲愴」や「月光」などの名作を生み出した、ブルンスヴィック伯爵別邸のあるドルナ・クルパまでの田舎道。路面はうねり、あちこち補修痕だらけで、カーブの曲率もきついという、まるでターマックラリーのルートのようなカントリーロードだったのだが、そこでも90km/h巡航を苦もなくこなした。

が、手放しでほめられることばかりではない。ハンガリーの首都ブダペストなど、段差や突起だらけの道路では、乗り心地は破綻気味で、欧州車のライバルと比較して平均未満であった。アウトバーンの工事区間と同様、どうもピークの鋭い衝撃を苦手とするようだ。ルノージャポンのフランス人スタッフによれば、クリオは5ドアハッチバックとエステートで足回りがセッティングのみならず部品単位で差別化が図られているとのこと。5ドアのほうはもっとしなやかだったことから、重量物を積むことを想定し、リアサスが固めに設定されていることが乗り心地の印象を落としている可能性もある。それでいてオーストリアの古都バーデン・アム・ヴィーンのように石畳の路面では何ら問題は感じられなかった。もともとハンドリングが良いなどの美点も多いので、今後、フェーズIIに進化して衝撃吸収の熟成が図られれば、商品力は格段に上がりそうに感じられた。


◆日本でも受け入れられる商品となるか

その一般道での推定燃費。欧州は今回ドライブした3か国に限らず、都市部以外の一般道では渋滞はほとんどなく、信号も滅多にない。が、村に差し掛かると90~100km/hから一気に50km/hに減速、村を出ると速やかに速度を回復という繰り返しで、燃費に厳しい側面もある。ドライブコンピュータの燃料消費量の数値と走行距離から計算したところ、燃費はおおむね18km/リットル程度。また、平均車速の緩いスロヴァキアの首都ブラチスラヴァ近郊で日本のようなエコランを試したときは、アイドリングストップが有効に機能したこともあって、およそ24km/リットルのリザルトとなった。総走行距離1404km、給油量80.6リットルで、通算燃費は17.4km/リットル。ドライブしたエリアは95オクタンのレギュラーガソリンと軽油の価格差がごく小さいため、ディーゼルとの走行コスト差は比較的小さいものになるだろう。

このクリオエステートは日本市場で販売されていないが、使い勝手の良さなどから、価格設定さえ適切なら商品力はポジティブに評価される可能性は十分にある。現時点ではこの0.9リットルターボと6速デュアルクラッチ自動変速機「EDC」との組み合わせは本国でも存在しないが、商品化の検討もなされているとのこと。今後の動向に注目したい。
《井元康一郎》

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