【ホンダ N-WGN 試乗】これまでのNシリーズとは違う“接地感”の向上…家村浩明

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ホンダ N-WGN
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販売好調のホンダNシリーズ。それに加わった第4弾がこの『N-WGN』だが、この新作、実はこれまでのNシリーズ各モデルとは若干異なる部分がある。

さて、どこが一番違うか。それはサスペンションと、それから派生する“乗り味”である。とくにフロントサスは新設計されており、それとダンパーの新チューンが組み合わされて、N-WGNには、これまでのシリーズとは違う“足”が付いている。

その違いは、私なりの表現だが“接地感”が大幅に増したことだ。この言葉がわかりにくければ、ステアリングホイールを通じて、掌につながっているもの…とくに前輪が地面をしっかり“噛んでいる”(くっついている)ような感覚で、これがこれまでのNシリーズとは違って、より強く掌に伝わるようになった。この変化もしくは改良は、私としては大歓迎だ。

これまでのNシリーズは、こと“接地感”ではそれが希薄で、もちろんステアリングを切れば、クルマはその操作通りに曲がったが、その時の手応えや地表との“密着感”が乏しかった。でも、この新作なら、クルマを操作してる!運転している!道と“対話”している!…といった感覚を持てる。この感覚(接地感)はスポーツカーだけでなく、どんな実用車であっても、また、女性の使用が多いと思われる機種であっても、やっぱりあった方がいいと私は思う。N-WGNの“グッジョブ”に、まずは拍手。

また、このN-WGNでは、音(主にエンジン音)の処理が基準車(スタンダード)系とカスタム系では異なる。カスタムは、基本的に音を抑えるチューンが施され、アイドリング時などは基準車よりも静かなのだが、エンジンの回転数にして3500~4000回転のところで、いきなり(と感じてしまう…)音が出て来る。対して、基準車では、そうした“波”というか突出した部分がなく、全体に音のレベルが高いと言えばそれまでだが、少なくとも私の場合、騒音レベルが変化しない分、基準車の方が乗っていて音が気にならなかった。

それと、この足の改変もその例の一つだが、この新作N-WGN、技術的にけっこう“気合い”が入っているところがある。たとえばエンジン(NA)では、インジェクターをデュアルにしたツイン・インジェクターを採用。そして、レーシングエンジンなどによく用いられる技術・機構であるナトリウム封入バルブをエキゾースト(排気)系に“おごって”いる。このへんは省燃費と出力&トルクを両立させたいとの意図で、さり気なく「軽では初」と謳っているが、いきなりエンジンのこういう部分で“凝る”ことに、ホンダ的なるものを感じる人は少なくないかもしれない。

新しい“足”がつくる乗り味は、市街地を中心に、できるだけ種々の状況で走ってみたが、しなやかな乗り心地と安定性が印象的。ベーシック仕様にはスタビライザーが付いていないが、この仕様が示す乗り心地の柔らかさは、むしろこのワゴンには合っているとも思う。ステアリングを切った時のロール(上下動)は大きめだが、それが不安よりも快適性の方に作用している。価格も考えると、こういう“素”の仕様も要チェックだ。

ともかく、この新型N-WGNは、これまでのN系とはひと味違う。もし、これまでのNシリーズの接地性などに違和感があったということなら、あらためての試乗をお勧めしたい。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★★

家村浩明|ライター&自動車ジャーナリスト
1947年、長崎生まれ。クルマは“時代を映す鏡”として興味深いというのが持論で、歴史や新型車、モータースポーツとその関心は広い。市販車では、近年の「パッケージング」の変化に大いに注目。日本メーカーが日常使用のための自動車について、そのカタチ、人とクルマの関わりや“接触面”を新しくして、世界に提案していると捉えている。著書に『最速GT-R物語』『プリウスという夢』『ル・マンへ……』など。

《家村浩明》

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