アウディがCFRPを使う理由、使えない理由

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アウディ・TTクワトロ・スポーツコンセプト(ジュネーブモーターショー14)
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3月11日、アウディが本拠を置く独インゴルシュタットで行われたアウディグループ年次記者会見において、研究開発担当取締役のハッケンベルグ氏は「(車体軽量化のために)今後あらゆる車種においてCFRPを使用していく」と明言した。

CFRP(carbon-fiber-reinforced plastic)、いわゆるカーボンが自動車の素材に革命を起こすと言われて久しい。量産車としては初めてボディシェルにCFRPを採用したBMW『i3』が、国内でも間もなく発売される。ハッケンベルグ氏は多くを語らなかったが、上述の言葉を裏付けるものとして、アウディはジュネーブモーターショー14において、CFRPをボディ構造に用いた『TT クワトロ スポーツ コンセプト』をスタディモデルとして出展している。アウディが量産車にCFRPを使用することは現実味のある話なのだろうか。

なぜBMW i3はCFRPを採用したのか?

一般に、CFRPはスチールなどに比べて高強度・軽量という特長がある一方で、精製・加工が困難であることから、高価であるとされる。こうした事情から、自動車におけるCFRPの利用は、レーシングカーのような市販を前提としない車両、もしくは、ランボルギーニ『アヴェンタドール』やマクラーレン『MP4-12C』のような非常に高価な車両に限定されていた。

このような背景の中、BMWが年産1万台クラスの量産車にCFRP製のボディシェルを採用したことは大きな意義がある。i3のように、近距離都市間移動を目的としたコンパクトEVの場合、航続距離を確保するために大型のバッテリーを搭載すると、バッテリー重量によって航続距離が制限されるというジレンマに陥る。欧州における近距離移動(片道100-200km)を達成するためには、車体軽量化が必要不可欠であったのだ。i3に使用されているCFRPは、素材供給が三菱レイヨン、加工が米SGL社である。BMWが両社との合弁会社の設立や新規工場の建設など巨額の投資を行ってきたのも、このような明確な理由があったためと言える。

軽量化を推進するアウディ

ボディワークにおけるCFRPの利用は、車体の軽量化に大きく貢献する。車体軽量化は、燃費(航続距離)や運動性能など、自動車の基本性能を大きく向上させるため、あらゆる自動車メーカーがそれに力を注ぐが、中でも最も軽量化を推進しているメーカーの1つがアウディである。

従来、アウディの軽量化技術は高剛性アルミニウムの使用によるところが大きかった。アウディスペースフレーム(ASF)と呼ばれる高剛性アルミニウムによるボディフレームおよび、車種によっては高剛性アルミニウムとスチールを融合させたボディフレームを用いることで軽量化を進めてきた。しかし、ハッケンベルグ氏自身も「アウディの強みは正しい素材を正しい場所で使えること」と語るように、必ずしもアルミニウムだけにこだわっているわけではないようだ。

アウディのCFRP利用を阻む壁

しかし、ネガティブな面も少なくない。最も深刻なのはサプライヤーの問題だ。現在、CFRPの原材料供給においては、東レ、三菱レイヨン、帝人などといった日本企業がシェアを占めている。しかし、CFRPの利用するには成形作業が必要であり、BMWの例のように、その工程を行うための合弁企業を設置するなどの投資も必要だ。

アウディの場合、グループ傘下のランボルギーニが東レよりCFRP原材料の供給を受けている。ハッケンベルグ氏も「ランボルギーニのノウハウがアウディに活かせると思う」と語っているように、アウディも同様に東レより供給を受けることが自然と思われる。しかし、東レはメルセデスベンツを有するダイムラーとCFRP製自動車部品の製造・販売を行う合弁会社を2011年に設立しており、2012年には『SL』の一部にCFRP製部品が採用されている。また、東レはボーイング社と2006年より16年間にわたるCFRP原材料の独占供給契約を結んでいる。東レは2015年までにCFRP原材料の生産能力を年産2万7100トン程度まで増強する見通しだが、こうした事情からアウディの量産に対応できる供給量の確保は難しいと考えられる。

東レ以外のサプライヤーを供給元にするとしても、年産1万台レベル以上分の安定供給を担えるかどうかは疑問が残る。

モチベーションはある。問題は積極的な投資

以上のような理由から、少なくとも今後数年内にi3のようなCFRPによるボディシェルを持った量産車がアウディから発売されることはないだろう。しかし、軽量化を推進するアウディにとって、CFRPがいずれ必要になることは間違いない。今回のハッケンベルグ氏の発言でも明らかなように、CFRPに対する強いモチベーションがあることも事実だ。

市販車ではないが、ルマン24レース参戦車両である『R18』シリーズのボディワークにCFRPが採用されている。過去、R18シリーズに搭載されたLEDヘッドライトが『A8』に採用されたように、「レースは技術の実験場」という標語の下に、レースによって得られた知見を量産車に反映するという哲学がアウディにはある。

また、CFRPの取扱いにはスチールとは異なる熟練した経験と知識が必要だと言われるが、ランボルギーニおよび『R8』の一部でCFRPを使用している点は、アウディにとっての利点となる。

結局のところ、アウディにおけるCFRPの使用は、原材料の安定供給および加工成形を担うパートナーを探すこと、そしてそれに対する十分な投資をするということに尽きる。ますます激化する独プレミアムブランドのシェア争いにとって、CFRPが鍵となることは間違いない。

《瓜生洋明》

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