2月5日、トヨタ自動車および現地ディストリビューターAl-Futtaim motors(アル・フッタイム社)は、合同で中東版スマートG-BOOKの現地マスコミ向け発表会を行った。会場はドバイ郊外アル・バディア・ゴルフクラブ。
ローンチ発表会の直後、場所をドバイ・エアポートフリーゾーンにあるトヨタ自動車の中近東・北アフリカ駐在員室の会議室に移し、トヨタ自動車IT・ITS担当友山茂樹常務と販売面で中近東を統括する永田浩司中近東部長に対してインタビューする機会を得た。
◆競合他社のテレマ投入と韓国勢の攻勢に危機感
----:2011年に日本でスマートG-Book、翌2012年はタイ進出50周年のタイミングでタイでもスマートG-Bookの投入した。次の地域として中東が選ばれた理由は。
友山常務:ここ中東は全体の約4割のシェアを持たせてもらっているように非常にトヨタのお客様が多い。一方で、ナビゲーション車載器の装着率が2割以下と一部の高級車を除いて低い。さらに開発が急ピッチで進み新しい道路がどんどん増えている。そして世界で最も高いスマートフォンの普及率がスマートフォンでのテレマティクスを提供する好条件と判断した。今回はトヨタ全車に対して12カ月無償提供、さらに8カ国に対してサービス開始というように最も大規模になった。
永田部長:中東はトヨタに限らず自動車メーカーの現地生産工場がないのが特徴。よって有利不利がなくメーカー間の競争は極めて激しい。BMW、GM、アウディなどのライバルが先行してテレマティクスを開始している。性能や品質に対しての消費者の目も厳しく、現在のトップを守るためにも最新のアドバンスドサービスをいち早く提供してゆかないといけない。
加えて、近年の韓国勢の攻勢に危機感を持っている。トヨタは中東で60年以上顧客の信頼を得てきた。最量販車種がランドクルーザーやハイラックスであるように、砂漠の走破性と信頼性を背景にブランドが構築されてきた。ところが近年の経済の発展が安い小型車を含めるニューユーザーを増やし、その市場に対してヒュンダイ・キアの韓国ブランドは、円高ウォン安を背景に安くて小さな車を投入してきた。
トヨタでは、新しいカローラ・ヤリス・RAV4など新デザインの小型車の投入。そして86やTRDのレース活動なども駆使してお父さんのブランドというイメージから、今後の世代にも愛されるブランドに変化している。
サッカー選手のクリスチャーノ・ロナウドをCMキャラクターに起用するなどと合わせて、スマートフォンでのテレマティクスサービスの開始は、新世代に対するマーケティング施策としては主軸のひとつと捉えている。
◆ディラーオペレーションとの接続を視野に
----:営業サイドからの要望はいつだったのか。
友山:約1年前にここドバイで永田部長とミーティングを持った時に相談を受けた。8カ国8社の現地ディストリビューターもやろうということになり、1年後にはこうして販売全車に対して提供できる体制が整った。車の開発や車載器でのサービスでは考えられないスピードだ。
まず、クラウドでサービスが提供されていることが大きい。iOSとアンドロイドのアプリマーケットでの提供なので各国に別れたキャリアとの交渉が必要なかった。スタート4カ国のコールセンターは十数人規模で構えUAEに集中させている。夏に開始される予定のサウジアラビアは法規の問題もあり、コールセンターはサウジ内に設ける予定だ。
----:サービス提供はディストリビューターの負担なのか。
友山:12カ月の無料期間は新車価格に含まれている。その後は年間150ディルハム(約4140円)をユーザーに負担していただき、そこから30%がアプリストアの手数料、地図メーカーへの支払い、オペレーターサービスのコストなどがまかなわれる。ディストリビューターの負担はない。
ただし、このサービスをユーザーに届けるにあたり、ディーラーの協力は不可欠だ。今回は全車が対象なので、納車時にアプリのインストールやセッティング、使い方の説明などを行ってもらう。すでにディーラー向けの研修は終わったが、非常に前向きに取り組んでもらっている。
----:ディーラーへの入庫誘導への期待は?
友山:タイでの実績として、30万人のユーザーが1周間に30万回の利用。つまり全体平均として1周間に1度トヨタはユーザーとコンタクトポイントを持つことができている。そこからディーラーに導入されているトヨタのCRMサービスである、eCRB(カスタマー・リレーションシップ・ビルディング)と連携して入庫やセールスの誘導に利用している。
ここ中東では、まずは顧客接点を増やすというミッションが先にある。その先はeCRBなのかどうかは別として、いずれにせよ、ディラーのオペレーションと繋げることは視野にある。
スマホテレマ・車載器テレマ・DA(ディスプレイオーディオ)・eCRBなど、トヨタスマートセンターというクラウドのプラットフォーム上に、様々なパーツが揃いつつある。地域のニーズを尊重して、必要なパーツから提供する。積み重ねていくと、目指す姿が完成する、というアプローチが可能になってきた。