マツダのデザインは、波にのっている。国産車が苦手な色気の出し方がすごくうまい。昼間見るときはもちろんだが、夜、都市の灯りのなかにたたずみながら自らも発光している姿は、思わず目をとめてしまう。
アクセラもそんなデザインだ。セダンとハッチバックの「スポーツ」。よく見ないとどちらかわからないくらい似ていて、美しく、それぞれがまとまっている。
インテリアも計算されている。質感のよさもさることながら、特に、囲まれ感とドラポジ。外側から見ると、運転席脇のフロントガラスのウエストラインは一直線なのに、内側の内装は中間あたりでV字になっている。前方に向けて上昇ラインを描き、それがそのままフロントウィンドーの高さにつながる。ゆえに、開放感があるのに運転中は包まれ感があるわけだ。スキージャンプの選手が、自分の板が目の前にないと平衡感覚がつかめずに怖いとよく言うけれど、まさにあの感じ。ほどよい高さに保たれたダッシュボードがなんとも安心できる。
きっちりとドラポジをあわせ、気分が満たされた状態でスタートさせると、むむ、重い! ずっしりと手ごたえのあるパワステ。さらにアクセル。踏み込んでもすぐに出るのではなく、自分自身で踏まないと前に出ないしっかりとした重さ。それもかなりな重さ。これがアクセラの目指す、操る楽しさかと納得しつつ、しかしながら、2.0リットルエンジンをトライするとこちらは抜けるように軽い加速感。この異なるふたつの性格、購入検討者は要チェックだろう。
ハンドリングは楽しく、コーナリングも気持ちいい。ちょっとオーバースピードかとびびりつつコーナーに進入しても、さらにハンドルをきれる頼もしさ。安定しているわ、遠心力をヘンに感じさせないわ、懐の深さを余裕でみせてくれる。そして、マツダお得意の、トランクの広さも見逃せない。このクルマが、欧州や豪州で人気の理由がよくわかる。新型もきっとかの地で売れるんだろうな。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★
岩貞るみこ|モータージャーナリスト/エッセイスト
女性誌や一般誌を中心に活動。イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。主にコンパクトカーを中心に精力的に取材中するほか、最近はノンフィクション作家として子供たちに命の尊さを伝える活動を行っている。JAF理事。チャイルドシート指導員。国土交通省 安全基準検討会検討員他、委員を兼任。