【インタビュー】「コンセプトクーペは今後のデザインショーケース」…ボルボデザイン担当上級副社長 トーマス・インゲンラート氏

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ボルボ・カー・コーポレーションデザイン担当上級副社長のトーマス・インゲンラート氏(東京モーターショー13)
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  • 東京モーターショー13 ボルボ コンセプトクーペ
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ボルボ・カー・コーポレーション、デザイン担当 上級副社長のトーマス・インゲンラート氏は、20年にわたりフォルクス・ワーゲングループのチーフデザイナーやデザインセンターのディレクターを務めたのち、2012年3月より、現職へ就いた。その彼にボルボのイメージや、今後のボルボデザインの方向性などについてインタビューした。

VWグループからボルボへ

----:ボルボへ移られてから1年半経ちました。新しい職場は以前と比較しどのようなイメージですか。

インゲンラート氏:1年半、ひとつのことに集中してやってきましたので、自分としてはずいぶん長くいるような気がします。

ボルボという企業は、(前職のように)いろいろなブランドが集まってひとつの大企業の下に入っている会社ではなく、ボルボだけでやっている会社です。そこで働いている人は、ひとつの明確な共通認識を持っている。例えばセイフティというのがボルボのブランドのコアですが、それを達成するために働いているのです。つまりまとまっているということがいえると思います。

スウェーデンでいま私は働いているのですが、スウェーデン人ではありません。その視点で見ると、スウェーデンは、非常にコミュニティを大事にしたり、人として当然なことを当然として大事にするということがあります。例えば、社会的側面や、コミュニティとつながりがあるということを、非常に価値を置いた社会なのです。そして、ボルボはそういった社会とつながっていると感じています。

クーペコンセプトをデザインした理由

----:東京モーターショー13にも展示されたクーペコンセプトは、インゲンラートさんが1年半かけて集中して取り組んだひとつの結果だと思います。このコンセプトカーをどういうお気持ちでデザインをされたのでしょうか。

インゲンラート氏:次の世代の量産車をどのようにしようかと考え、そのエレメントを盛り込んだのがこのコンセプトクーペなのです。つまり、このクーペだけに1年半かけたのではなく、次の世代のクルマを考えた結果、このクーペコンセプトが出来上がったのです。新しいデザインとして、何をやるかという考え方を盛り込み、今後10年間の方向性を示した、そのショーケースになのです。

----:では、クーペというボディスタイルを選んだのはなぜでしょう。

インゲンラート氏:クーペは標準的なボディスタイルで、とてもクラシックなクルマです。みんなが、クーペといったらこういうクルマと非常にイメージしやすく、そのイメージとクーペコンセプトを比べて欲しいと思い、クーペを選びました。別の見方をすると、新しいコンセプトのクルマを提案すると、比べる先がなく、将来どうなるかがイメージしにくい。そこで、クーペをベンチマークとして考えていただきたいと思ったのです。

例えば、XC60やXC90などの次のSUVのデザインについてお話をするときに、新しいコンセプトのモデルではなく、クーペタイプのモデルを、我々がこれからつくるクルマのデザインが詰まったショーケースでお見せすれば、デザインの方向性を明確に示すことが出来、かつ、伝わりやすいと考えたのです。

----:つまり、このコンセプトクーペに今後のボルボのデザインの方向性がちりばめられているということですね。

イ:はい。このクーペの中に、明確にどういったことを実現したいかというエレメントを盛り込んでいます。デザインランゲージ、デザインシグネチャーから、デイタイムランニングライトまで、すべて生産車に反映するデザインをここに表しています。

さらに、Cピラーのガラスのカット方法は、次世代のクルマに採用していくデザインです。また、室内のクリスタルのギアレバーも、生産車でやりたいと思ったことを基に、ここで示している。クーペコンセプトは、夢のクルマを表したものではなく、実現性のある正直なプレビューと言い得るでしょう。

----:BMWでは“ホフマイスターキンク”という名称で呼ぶなど、Cピラーのウインドウカットには特徴を持たせています。ボルボではどのような呼び方をしますか?

インゲンラート氏:XC90がデビューするときには名前を付けておきましょう。いろいろ考えているんですが、何がいいかな。

P1800のデザインモチーフを取り入れること

----:S60やV60、V40など、ボルボの最近の傾向としてP1800のデザインモチーフを使うことが多いのですが、それはなぜでしょう。

インゲンラート氏:まずボルボというと、ボクシーな四角い形のクルマと思われてしまいます。それに対して、P1800は非常に美しいシェイプをしているので、(こういうデザインもあると)覚えて欲しいと思い、選んだということはあります。

ただし、コンセプトクーペでは、あくまでもデザインのショーケースなので、P1800のキーとなるデザインエレメントは取り入れていません。しかし、P1800のスピリットである、エキサイトメントや、タイムレスエレガンスは受け継ぎ、新しいクルマに表現していきたいと思っています。

デザイナーになるためには

----:さて、インゲンラートさんは、どのような子供時代を過ごして、デザイナーになられたのでしょう。

インゲンラート氏:私には二人の男の子、一人の女の子の3人子供がいまして、真ん中の息子が一番自分に似てるなと思うので、彼の話をさせてください。

娘は、非常にソーシャルで、誰かと話をするなど、コミュニケーションを取ろうとする方なんですけれど、真ん中の息子は、非常に内向的で、自分の世界に入るとずっと何時間でもそれが出来るような人なんです。ですから、レゴで何かをつくったり、雑誌で好きな写真を見ると、何時間でも見続けることが出来る。

集中力というのは非常に大事かなと思います。自分もそうですが、何かひとつのことに集中すると、何時間でもずっとやっていられる。それが、デザイナーにとって非常に良い特質、資質につながると思っています。

《内田俊一》

内田俊一

内田俊一(うちだしゅんいち) 日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かしデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。保有車は車検切れのルノー25バカラとルノー10。

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