東京10号線延伸新線の検討委が解散…複雑な経緯たどった千葉ニュータウンの鉄道構想

鉄道 行政

千葉県営鉄道北千葉線の建設用地として確保されていた鎌ヶ谷市北中沢の空き地。同線の計画を引き継ぐ形で事業化が考えられていた「東京10号線延伸新線」の検討委員会がこのほど解散し、事業化の検討が中止された。
  • 千葉県営鉄道北千葉線の建設用地として確保されていた鎌ヶ谷市北中沢の空き地。同線の計画を引き継ぐ形で事業化が考えられていた「東京10号線延伸新線」の検討委員会がこのほど解散し、事業化の検討が中止された。
  • 東京10号線延伸新線の予定ルート。現在の北総鉄道北総線とともに千葉ニュータウンのアクセス鉄道として整備する構想だったが、膨大な事業費や北総線との競合などが懸念されていた。
  • 都営新宿線の終点・本八幡駅で発車を待つ笹塚行きの列車。当初の計画ではここで折り返さず、北千葉線に乗り入れて千葉ニュータウンまで運転されるはずだった。
  • 本八幡駅の駅名標。右側の隣接駅表示は空欄となっているが、北千葉線が開業していれば「東菅野」の文字が入るはずだった。
  • 千葉県営鉄道北千葉線の建設用地として確保されていた鎌ヶ谷市北中沢の空き地。1978年に建設計画が凍結されて以降、具体化に向けた動きはほとんど見られなかった。
  • 旧・北千葉線の計画区間のうち、北総鉄道北総線に並行する新鎌ヶ谷~小室間は東京10号線延伸新線の構想に含まれず、2000年に計画の中止が正式に決定した。北総線の線路の南側(右)に複線の鉄道をもう一つ敷けるだけの空き地があるが、ここに北千葉線の線路を敷く予定だった。
  • 旧・北千葉線の計画区間のうち小室~印旛日本医大間は、現在の北総線の延伸部に転用された。この区間にも北総線の線路の北側(左)に鉄道をもう1本敷設できるスペースが設けられているが、こちらは成田新幹線の建設用地にする予定だった。
2020年の夏季オリンピック・パラリンピック開催地が東京に決まったことで、首都圏では鉄道新線の建設などインフラ整備の促進が期待されている。

こうしたなか、ひっそりと消えた鉄道新線構想がある。本八幡(千葉県市川市)~新鎌ヶ谷(鎌ヶ谷市)間を結び、千葉ニュータウンの「もう一つ」の鉄道ルートとなるはずだった「東京10号線延伸新線(旧・千葉県営鉄道北千葉線)」だ。9月3日、千葉県と市川市、鎌ヶ谷市でつくる「東京10号線延伸新線促進検討委員会」が解散し、事業化に向けての検討が中止された。

北千葉線は、ひじょうに複雑な経緯をたどった幻の鉄道路線として知られている。

1960年代後半、千葉県北部の北総台地に千葉ニュータウンを建設することが計画され、東京都心とニュータウンを結ぶ通勤鉄道の整備もあわせて計画された。1973年時点の計画ではニュータウンの規模から2本の通勤鉄道が必要とされ、東京都交通局の10号線(都営新宿線)を延伸する形で本八幡~新鎌ヶ谷~小室~千葉ニュータウン中央~印旛日本医大間を結ぶ北千葉線を千葉県が建設。さらに京成グループの北総開発鉄道(現在の北総鉄道)が京成高砂駅から分岐して新鎌ヶ谷駅を経由し、ここから北千葉線に並行して小室駅までを結ぶ北総線を建設することになっていた。

千葉ニュータウンの中央部には、東西に横断する4線(複々線)分の鉄道用地を確保することになっていた。このうち南側の2線を北千葉線が使用し、北側の2線は新鎌ヶ谷~小室間のみ北総線が使用。残る北側の千葉ニュータウン中央~印旛日本医大間の敷地は、東京~成田空港間を結ぶ成田新幹線が使用することになった。

ただ、2本の通勤鉄道を一気に建設することは、建設費や採算性などを考慮すると難しい。このため、ニュータウンの開発の進み具合や入居の状況にあわせ、段階的に整備することが考えられた。

まず第1段階として、北総開発鉄道が北総線新鎌ヶ谷~小室間を建設。新鎌ヶ谷間駅付近に新京成電鉄新京成線との連絡線を設けて北初富駅に接続し、当面は新京成線に乗り入れて松戸~小室間を結ぶものとした。

続いて第2段階では、千葉県が北千葉線の小室~千葉ニュータウン中央間のみ建設。小室駅で北総線に接続し、新京成線~北総線~北千葉線の直通運転を行うものとした。ただし、新京成線と北総線は2本のレールの幅(軌間)が1435mmであるのに対し、北千葉線の軌間は都営新宿線との直通運転を考慮して1372mmを本来の計画としている。このため、暫定的に1435mm軌間の単線で建設することにした。

そして第3段階では、北千葉線の本八幡~小室間と千葉ニュータウン中央~印旛日本医大間を、都営新宿線の本八幡延伸にあわせて1372mm軌間で建設。同時に小室~千葉ニュータウン中央間も軌間を1372mmに変更して複線化し、新京成線~北総線との直通運転を中止して、都営新宿線への乗り入れを図る計画だった。

北総開発鉄道と千葉県は、この計画に基づき用地買収や路盤工事を進めるが、土地や建設資材の高騰で建設費が膨張し、建設が遅れがちになった。ニュータウンの敷地外となる本八幡~新鎌ヶ谷間も、既成の市街地を通ることから建設費の見込みがさらにふくれあがっていた。そもそもニュータウン自体、経済成長の鈍化で当初考えられていたほどの入居数が見込めなくなり、通勤鉄道を2本も整備する必要性が薄れていた。

千葉ニュータウン内を通る予定だった成田新幹線も、建設反対運動などの影響があり、実際に路盤の工事が進んだのは成田空港付近のみ。ニュータウン予定地外では用地買収すらほとんど進まず、後に計画は頓挫することになる。

結局、第1段階の北総線北初富~小室間は1979年に開業したものの、その前年に千葉県は北千葉線計画区間のうち本八幡~小室間の建設を凍結。残る小室~印旛日本医大間は宅地開発公団(後に住宅・都市整備公団などを経て現在の都市再生機構)が建設を引き継いだ。このため、線路の規格も1435mm軌間の複線に変更し、実質的には北総線の延伸部として建設することにした。

その後、北総線は1991年に京成高砂~小室間が全通。旧・北千葉線の小室~印旛日本医大間も2000年までに全通し、現在は北総線の一部として列車が運転されている。また、2010年には成田新幹線の代替路線として北総線を延伸する形となる京成成田空港線(成田スカイアクセス)も開業。北総線は現在、空港アクセス鉄道としての機能も担っている。

一方、建設が凍結された北千葉線の本八幡~新鎌ヶ谷~小室間も、1990年代に入ると再開に向けた動きが見られるようになった。2000年代には北千葉線の計画を正式に中止しつつ、名称を東京10号線延伸新線に変更。北総線に並行しない本八幡~新鎌ヶ谷間のみ建設することが検討されるようになり、千葉県が2010年にまとめた総合計画「輝け!ちば元気プラン」でも「東京10号線延伸新線の事業化に向けた検討」が盛り込まれていた。

しかし、約1400億円ともいわれる事業費を確保するめどが立たず、さらに千葉ニュータウンへの鉄道ルートが北総線と東京10号線延伸新線の二つになることで北総線の利用者が減り、多額の累積赤字を抱える北総鉄道の経営に影響が出ることなども懸念された。

こうしたことから関係自治体は事業化の検討を中止。千葉県ウェブサイトの「千葉県内の新線及び計画線の概要」と題したページからも、東京10号線延伸新線の項目が9月9日までに削除された。千葉県が現在策定を進めている新しい総合計画案には東京10号線延伸新線が盛り込まれておらず、長期的な構想としても「維持する考えはない」(交通計画課)という。
《草町義和》

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