乗り味は滑らかな走りで定評のある『フォーカス』とプラットフォームを共有するだけに、かなり上質だ。
肉厚なシートは調整機構が適正でシートポジションが一発で探し出せるほか、グローバルカーにありがちなアクセル/ブレーキペダルのオフセットも気にならない。唯一の不満はウインカーレバーの位置。タイの工場で造られるフォーカスではウインカーレバーが右であったが、スペイン・バルセロナ工場製の『クーガ』は左側だ。
上級グレードの「タイタニアム」の車両重量は1720kgとかさむが、ターボラグが極めて少ない1.6リットルエコブーストターボユニットは1600~5000回転の幅広い回転域で最大トルクを発揮するため、10%以上の勾配路でも力強い加速を披露する。ただし、5000回転あたりを境に急激にエンジン音が唸り気味になるのが残念だ。フォード曰く、「ディーゼルのトルクフル&低燃費性能をガソリンで両立させ、さらに安価」とうたう一方、本国で用意されるディーゼルモデルについても『CX-5』の成功を鑑み、将来的には導入を検討したいという。
インテリジェントAWDは前後駆動力配分を0-100~100-0まで自動制御するほか、「カーブコントロール」や「トルクベクタリング・コントロール」によりコーナリング特性も大きく高めた。
しかし、18インチモデルはバネ下重量が重いため、荒れた路面では出来の良いシートをもってしても、時としてきつめの衝撃を身体に伝えてきてしまう。上質さを狙うなら、未試乗ながら17インチ仕様の「トレンド」(340万円)がいいだろう。加えて、オンロード志向が強いクーガだが、SUVが日本で使われるシーンを想定するなら、ヒルスタート・アシスト機能だけでなく、ぬかるみや凍結した下り勾配路で絶大な効果を発揮するヒルディセント機能も欲しかった。
コンチネンタル製の赤外線レーザーを使用した「衝突被害軽減ブレーキ」である「アクティブ・シティ・ストップ」や、ボディサイドを監視する「BLIS」を採用するなど安全装備も非常に高いレベルだ。ちなみに本国では、より高い速度領域で機能するミリ波レーダーを使用した「衝突被害軽減ブレーキ」や、「アダプティブクルーズコントロール」の設定があるとのことだが、日本仕様はスペックの問題から採用が見送られている。とはいえ、「タイタニアム」はこれらを標準装備して385万円。十分に納得のいくプライスを掲げる魅力的なSUVだ。
■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★
西村直人|交通コメンテーター
1972年1月 東京生まれ。専門分野はパーソナルモビリティだが、広い視野をもつためにWRカーやF1、さらには二輪界のF1と言われるMotoGPマシンでのサーキット走行をこなしつつ、四&二輪の草レースにも精力的に参戦中。初代、2代目フィットでは耐久レースにも参戦。国土交通省「スマートウェイ検討委員会」、警察庁「UTMS懇談会」に出席したほか、東京都交通局のバスモニター役も務めた。