2012年のイタリアのデータを見ていると、車両盗難第一位はこの『パンダ』である。つまりそのくらい売れていて、そのくらい人気なのだ。
日本はコンパクトカー激戦区ゆえ、巷でなかなかその姿を見ることはないけれど、フルモデルチェンジしたこの三代目、かなり本気で参入してきたとみた。
本気の度合いは、完成度の高さである。徹底的に使い倒しちゃってくださいという雰囲気たっぷりの先代に比べ、今回の質の高さはどうしたことか。デザインにもそこかしこにこだわりが見られ、シカクの角をとったやわらかな「シカクいデザイン」がふんだんに取り入れられるほか、後部座席は国産車でもまだの、三人分の三点式シートベルト(欧州は法制化されているからね)と、安全性も考えている。
しかも、オシリをしゅっと、確実にやわらかく受け止める前席のシートクッションのよさといったら。女子はこれだけで、ポイントアップだろう。後部座席は、ちょっとうすっぺらな印象だけれど、コンパクトカー・ユーザーはあまり使わない場所だし、ここにお金をかけることもあるまい。
エンジンは、『500』や『イプシロン』にも採用されたツインエアの875cc。ミッションは、MTベースのデュアロジック。しかし、イプシロンのようなちょっと高級な仕立てでこの動力だと物足りないと感じるのに、パンダだとこれで十分、たのしーい、となるのはなぜだろう。ATモードで一速~二速とシフトアップするにも息継ぎをするのに、まあ、こんなもんだろうと満足している自分がいるから不思議である。
ちっちゃなパンダ。ふだんの街乗りがいきなりポジティブで攻めの姿勢になりそうな気分。でも、そんな自分も悪くないんじゃないかと思う。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★
岩貞るみこ|モータージャーナリスト/エッセイスト
女性誌や一般誌を中心に活動。イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。主にコンパクトカーを中心に精力的に取材中するほか、最近はノンフィクション作家として子供たちに命の尊さを伝える活動を行っている。JAF理事。チャイルドシート指導員。国土交通省 安全基準検討会検討員他、委員を兼任。