低燃費化競争、停戦ラインは30km/リットルか…見えてきた分かれ道

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スズキ・スイフト RS
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  • スズキ株式会社 四輪技術本部 副本部長 第二カーライン長 堀 算伸 氏
  • スズキ株式会社 四輪エンジン第一設計部 第一課 係長 磯部真也 氏
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  • スズキ・ワゴンR 20周年記念車
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7月、スズキは16日に『ワゴンR』、17日に『スイフト』の一部改良を実施。燃費性能をワゴンRは最高30.0km/リットル、スイフトは最高26.4km/リットルに向上させ、それぞれガソリン・エンジン車としてクラストップを達成した。

これらの燃費性能の数字は、ほんの数年前までハイブリッド車でなければ、達成できないと思われていた数字だ。しかし、最近の激しい低燃費化競争の末、ついにガソリン・エンジンでも30km/リットルの大台に届いてしまった。

◆燃費性能、どこまで伸びる?…アイテムは出尽くしたという意見も

いったい、この数字は、どこまで伸びてゆくのであろうか。

その疑問を、スズキの四輪技術本部副本部長である堀算伸氏とスイフトのエンジン開発担当の磯部真也氏に聞くことができた。

「どこまで伸びるのか? ということですが、今はアイテムが出尽くしつつある状況です」と磯部氏は言う。

ここで言うアイテムとは、燃費向上技術のことで、減速エネルギー回生システムや、それを蓄える二次電池、アイドリング・ストップ、クールドEGRシステム、転がり抵抗の少ないタイヤ(高い空気圧設定を含む)、車体の空気抵抗の低減、エンジンの直噴化、排気量ダウン&過給器、インジェクターの複数化(デュアルジェット)などを指す。

ワゴンRで言えば、減速エネルギー回生システム&二次電池の「エネチャージ」を採用しているし、スイフトは、その上にクールドEGRシステムと1気筒当たり2本のインジェクターを備える「デュアルジェット」が加えられている。

こうした燃費向上アイテムを組み合わせることで、各社は燃費競争でサバイバルを展開している。

◆足元の燃費競争は終焉へ向かう

しかし、磯部氏は際限なく燃費が伸びることには疑問符を投げかける。

「これから先は、費用対効果が問題になってくると思います」と磯部氏。つまり、コストだ。これまでは比較的安価に技術を組み合わせることで低燃費化を達成してきた。しかしこれ以上を目指す場合は、技術が値段に跳ね返ってくるという見方だ。

ちなみに、新型スイフトに関して言えば、デュアルジェット採用エンジンを搭載するグレードは、従来型エンジンよりも約12万円割高な値段設定になっている。単純にインジェクターの数が多いのだから、コストアップは避けられない。

同様に、新しい技術を採用するにはコストがかかる。それを他の部分のコストダウンで補おうとしても、そこには限界がある。価格に敏感なユーザーに対して「燃費を2割上げますので、価格を10万円アップさせてください」というお願いは、なかなか難しいだろう。

「そういう意味で30km/リットルは区切りになるのではないでしょうか」と、四輪技術本部副部長としてスイフトやワゴンRを見てきた堀算伸氏は言う。

現在のところワゴンRは、『ムーヴ』(29.0km/リットル)、『デイズ/eKワゴン』(29.2km/リットル)、『N-ONE』(27.0km/リットル)といったライバルを上回るクラストップの燃費性能を達成した。しかし、いつまでもライバルが黙っているはずはない。すぐに30km/リットルの大台に乗ってくると堀氏は予想している。

「ですが、30km/リットルに乗れば、お客様もある程度、納得してくれるのではないでしょうか」と堀氏。現実的なことを言えば、現状で30km/リットルを超えて、40や50km/リットルを目指すには、クルマの値段が上がってしまい商品性が落ちる。技術的には可能でも、現状では価格が高く、売れないクルマになってしまう。30km/リットル台がバランスの良いところになるのだろう。

◆30km/リットルが“停戦ライン”

「ライバルがみんな30km/リットル台になれば、燃費ではなく、他の魅力が勝負になると思います。燃費は良くて当然。他の魅力は? ということです。それが“安全”なのか、“つながる楽しみ”なのか、“快適”なのかは、まだ分かりません」と堀氏。

ガソリン・エンジン車が30km/リットルという数字で、低燃費競争の主役の一台でもある『プリウス』に肉薄する燃費性能を持っていれば、それ以上を望む声は少ないだろう。また、コンパクトカーの燃費競争は、言ってしまえば“維持費の安さ”競争である。ワクワクする夢や便利さではなく、世知辛い生活費の問題だ。それはそれで重要なことではあるが、右を向いても左を向いても「経済性」だけが売りのクルマばかりというのもつまらない。

燃費競争を一段落させて、その先の、夢ある新しいクルマの魅力が競争のメインテーマになることを祈るばかりだ。
《鈴木ケンイチ》

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