走らせてまず伝わってきたのは、ボディ剛性の高さ。そしてステアリングを切った途端、驚くほどの旋回フィールを見せてくれた。交差点など舵角の大きいコーナリングでは、回転中心がドライバーのすぐ後ろにある。リヤサスも積極的に旋回させる特性のジオメトリーだからだろう、キビキビと走って街中でも走りが気持ちいい。これまでも欧州フォードの傑作は数々あったけれど、こんなにハンドリングにキレを感じるフォードは初めてかも知れない。
それでいて高速走行での安定感やワインディングで攻め込んだ時にはナーバスさはなく、落ち着きいているのがいい。適度なマイルドさに仕立てているあたりが、いかにも欧州フォードのテイストだ。
エンジンは低速トルクが豊かで、自然吸気らしい反応の良さから2000rpm前後でシフトアップしても十分に流れをリードできる。
ただ残念なのは、Dレンジではマニュアルシフトに対応してくれないところで、上り坂などで少し加速したい時には、必要以上にアクセルを踏み込んでキックダウンしなければならない。燃費重視で積極的にシフトアップしていく特性が、時にはアダになることもあるのだ。個人的にはSモードでマニュアルシフトした時の反応も、DCTらしい俊敏さがもう少し欲しいと思う。
あとは燃費計の表示をリッターあたりのkmに改めて、アイドリングストップ機構さえ備えれば、燃費性能も十分なものになりそうだ。
プレミアムハッチでも「ゴルフやAクラスではありきたり」と言う人だけでなく、この気持ちいい走りを秘かに楽しんでほくそ笑む、そんな人に向いているクルマだ。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア・居住性:★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★
高根英幸/自動車&工業技術評論家(日本自動車ジャーナリスト協会会員)
トヨタ直営ディーラーの営業、輸入車専門誌の編集者を経てフリーの自動車ライターに。芝浦工大機械工学部卒。クルマのメカニズムすべてに興味をもち、旧車からハイテクまで納得いくまで解析。ドライビングだけでなくメンテナンスやモディファイも自ら積極的に楽しむ。自宅1Fの書斎兼ガレージには整備用リフトも完備。著書に「クルマのハイテク」(ソフトバンク・クリエイティブ刊)