【プジョー 208 試乗】個性的な3種類の仕様、買いか待ちかが悩ましい…松下宏

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プジョー208
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プジョー『208』は2012年9月に発表され、12月から発売された。でも最終的に売れ筋グレードになるはずの1.2リッターエンジン+2ペダル仕様や、パワフルなエンジンを搭載したGTIは2013年に追加される予定だ。

208は「リ・ジェネレーション」をテーマに開発され、ボディがひと回り小さくなった。ほとんどのクルマは、モデルチェンジを重ねるごとにボディやエンジンやタイヤが大きくなるのが普通。そんな中でボディを小さくするのはごく例外的だが、これはとても良いことだ。

しかもホイールベースは『207』と変わらないのに、全長を85mmも短くして4mを切るサイズに収めた。短くなったのはフロントのオーバーハングが中心で、居住空間は確保されている。ボディのダウンサイジングは大いに歓迎しておきたい。

外観デザインもフロントグリルをやや小さくするなど、真っ当な方向に進化した。ちょっと凝った感じのブーメラン型テールランプなど、プジョーらしい個性が表現されている。

インテリアは更に新鮮な印象で、大抵のクルマはステアリングホイールの中からメーターパネルを見るようにデザインされているが、208では小径(しょうけい)のステアリングが装着され、その上からパネルを見るように作られている。

このデザインはアイデアはともかく、私の体型と運転姿勢だとメーターパネルの一部がステアリングホイールに隠れてしまう。個人的にはちょっと不満なデザインでもある。また太陽の角度によってメッキパーツの一部が反射してまぶしいのも不満な点だった。

最初に試乗したのはアリュール。3気筒1.2リッターエンジンは排気量のダウンサイジングを象徴するものだ。自然吸気DOHCで60kW/118N・mのパワー&トルクを発生する。

動力性能は数値的に物足りないかなと思って乗り始めたが、実際には意外にというか、普通に良く走るクルマという感じだった。これには3気筒エンジンと5速MTの組み合わせによるボディの軽さが貢献している。アリュールだけがほかのグレードに比べてざっと100kgほど軽い1070kgなのだ。これが軽快な走りにつながっている。

しかもアリュールはベースモデルで200万円を切る価格が設定されている。マニュアル車に乗れる人なら、チェックを入れておきたいモデルである。

プレミアムは1.6リッターエンジンと4速ATの組み合わせだ。プジョーの4速ATといえば、かつてその変速スケジュールは日本で乗ると違和感の塊みたいなところがあって、いろいろな指摘がされた経緯がある。

それが改良を重ねることでだんだんに良くなって、最近ではプジョー関係者が“究極の4速AT”などという言い方をするようになっている。今回の208用の4速ATは正にそんなイメージの変速フィールを感じさせた。

4速であることの限界はあるものの、自然な変速フィールに違和感はなく、普通に気持ち良く走れるクルマになっていた。1.6リッターエンジンは2013年度中に1.2リッターに置き換えられる予定が明らかにされている。恐らくは直噴ターボ仕様エンジン+セミATになるはずで、それを待つか、今の1.6リッター+4速ATを買うかは悩みどころである。

アリュールでも共通だが、乗り心地の良さは相変わらず。少しくらい荒れた路面なら、問題なくていなして快適な乗り心地を味わわせてくれる。最近のプジョーの足回りは硬くなってきていて、今回の208も昔のような猫足ではなくなっているが、国産車にはなかなか出せないような味がある。

GTに搭載される1.6リッターのDOHCターボは115kW/240N・mの実力。この仕様のエンジンはスポーツモデルのRCZでは6速ATと組み合わされているが、208では6速MTと組み合わせてスポーティな走りを実現する。低速域からしっかりトルクを感じさせ、自然吸気エンジンと間違えるくらいにスムーズな吹き上がりを見せる。

ホールド性に優れたスポーツシートや、やや硬めにチューンされた足回りなどにGTならではの魅力がある。ただ、これも2013年度中に更にパワフルなエンジンを搭載するGTIが追加される予定なので、今の時点で選ぶかどうかはやや微妙なところとなる。

このように、現時点ではそれぞれに個性的な3種類の仕様があるが、これが絶対という感じのモデルがないのが判断を難しくしている。今後の商品展開が明らかにされているので、自分の代替サイクルと合わせてじっくり検討したい。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★

松下宏|自動車評論家
1951年群馬県前橋市生まれ。自動車業界誌記者、クルマ雑誌編集者を経てフリーランサーに。税金、保険、諸費用など、クルマとお金に関係する経済的な話に強いことで知られる。ほぼ毎日、ネット上に日記を執筆中。

《松下宏》

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