なにげなくドアを開けたら、足元にスーッと電動でステップが現れて、思わず感嘆の声をあげていた。ステップの側面に内蔵されたLEDランプが光っていて、未来的な雰囲気もあってとてもカッコいい。どこか、ほかの福祉車両とはひと味違うなぁというのが、日産『セレナ』の「LV(ライフケアビークル)シリーズ アンシャンテ」の第一印象だ。
福祉車両にもドレスアップ要素を
どうしても実用性重視、生活感が出やすくなってしまう福祉車両だけど、もっとカッコ良くてもいいのではないか、という思いが日産直系の架装メーカーであるオーテックにはあるという。確かに、その通り。本人も介助する方も、カッコいいクルマならもっと気分がアップするに違いない。
人気グレードのハイウェイスターで、しかも売れ筋の「S-HYBRID」が早くも福祉車両としてラインナップしているところにも、その思いが感じられた。今回はその中で、セカンドシートが電動で回転し、昇降するセカンドスライドアップシートに試乗してみた。
◆シートの昇降機能にも工夫が
その動作ひとつひとつにも、オーテックならではの工夫がたくさん詰まっている。まず、シートの昇降は多機能ワイヤレスリモコンで行うが、動作のスピードを速い・遅いと変更できるのが面白い。シートには加圧センサーが内蔵されており、誰かがシートに座っている時は安全を考慮して遅いスピードしか選べないが、誰も乗っていない時はスピーディに操作することができる。雨が降ったりして早く収納したい時、出したい時には特に便利だ。
そして実際に乗って昇降をしてみると、シートが前向きからドア側に90度回転したところで、なんと座面の角度が少し変わって腰が沈み、前のめりの体勢にならないように工夫されていた。他のサイドリフトアップシートと比べても上体が安定するので、安心感がぐんとアップする。
◆収納式の車いす収納装置も
そしてシートが下降していくと、ちょうどいい高さをメモリーに設定できて、次回からは自動的にその高さで止まるようになるという。これも、いつも同じ車椅子から乗り換える時などは、いちいちスイッチを離すタイミングに気を遣わなくていいので便利だ。また、フットプレートが大きめにできていて、膝をそれほど深く曲げなくても座れる。女性はスカートを履く時など、足元が気になるのでこれは嬉しい気遣いだ。
さらに、ラゲッジを開けるとアンダーボックスに電動車いす収納装置が収まっていた。それを手で起こして、車椅子にベルトを通して電動で引き上げる。すっぽりとラゲッジに収まって、降ろす時も電動でスイスイとラクに操作できた。7人がしっかり乗れて、セカンドシートは専用開発のロングスライドで足元広々。リラックスして座れば、福祉車両だということをすっかり忘れて、贅沢な時間を過ごせそうだ。