FF用を2タイプ並行して開発
日産自動車がハイブリッド車(HV)の品揃えを拡充する。これまではFR(後輪駆動式)の高級乗用車のみに設定していたが、FF(前輪駆動式)にも搭載できるシステムを開発しており、このほど技術の概要を公開した。
2013年から順次FF車での展開を図る。日産は電気自動車(EV)の量産化で先行しているものの、普及には時間がかかる。環境技術の間口を広げて顧客獲得につなげるとともに、国内外の環境規制に対処していく。
同社は自社開発のHVシステムを、10年に『フーガ』(海外はインフィニティ『M』)に搭載して発売した。「1モーター2クラッチ」方式であり、まずFR車での実用化を図った。このHVは、V6型3.5リットルエンジンと組み合わせている。
開発中のFF用システムもFR用と同じ1モーター2クラッチ方式で、システムを縦置き(FR用)から横置きに変える形となる。ミッションにはCVT(無段変速機)を採用、エンジンはスーパーチャージャーを搭載した4気筒2.5リットルと、無過給式の4気筒2リットルの2タイプで開発を進めている。
13年に北米から投入開始
バッテリーは、EV『リーフ』で培ったリチウムイオン電池を、瞬発力を高めてHV用に改良したものを使う。容量はフーガHV用(1.3kWh)の半分程度に設定するという。技術開発のトップである山下光彦副社長は「シンプルなシステムであり、多くの車種への適用が容易」と評価する。
今年8月に『セレナ』に搭載した「簡易型」を除く本格HVでは当面、このシステムを「主体にする」(山下氏)方針だ。バッテリー容量を拡大することなどでプラグインハイブリッド車(PHV)への展開も、比較的容易にできる。
スーパーチャージャー搭載2.5リットルのタイプは「V6型3.5リットルエンジン並みの動力性能だが、燃費は2.5リットル並みを確保する」(開発担当者)方針だ。これらFF用の2タイプではモーターを共通化するなど、コスト低減にも配慮する。
市販はこの2.5リットルタイプから始める見通しで、まず13年に北米に投入する。動力性能から、SUVを含む高級車への搭載となろう。日本でのFFタイプのHV投入は14年を計画している。2リットルタイプは北米の主力セダンである『アルティマ』クラスの各車種への搭載を検討している。
CAFEの35%改善にも不可欠なHV
山下副社長は「すべてのクルマが究極的にはEVになるにしても、そこに至るまでは(HVなどによる)段階的な電動化が必要。そうでないとグローバルな環境規制にも対応できない」と指摘する。
日産は16年度までの6か年の「中期環境行動計画」で、日米欧および中国でのCAFE(企業平均燃費)を35%改善する目標を掲げている。その達成には、普及に時間を要すEVだけではとても間に合わず、多面的なアプローチが不可欠だ。
従来、同社は環境技術開発での経営資源を、EV優先で配分してきた。16年までに4モデルに拡充というEVの投入計画の実現が見えてくるようになり、ようやくHVの開発も加速させうる段階に入ってきたといえる。