【インタビュー】「LADAからダットサン、インフィニティまで、ロシアでフルラインを実現する」…日産 アンディ・パーマー副社長

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【インタビュー】「LADAからダットサン、インフィニティまで、ロシアでフルラインを実現する」…日産 アンディ・パーマー副社長
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2012年5月、ロシアで「LADA」を展開する現地メーカーアフトワズの出資を発表したルノー・日産。これにより、両ブランドのロシア市場におけるプレゼンス向上は、より現実的なものになった。日産自動車のアンディ・パーマー副社長に聞いたロシア戦略には、ルノー・日産連合の世界戦略が透けて見えた。

■日産とルノーとの役割分担はフラット

---:日産にとってのロシア市場の位置づけと、現段階での手応えを教えてください。

パーマー:ロシア市場は、アフリカ、インド、中東、欧州、総称して「AIME」(エイム)というカテゴリーのなかの一国としてマネジメントしています。その意味では欧州の一部分という認識です。ただマネジメントは細分化して行なっています。ロシアでは欧州、日本、アメリカと各国のブランドが販売されていますね。そうしたなかで日産のロシア市場への体制としては、投入車両ごとにひとりずつ、ビジネスに落とし込んでいくプログラムディレクターをモスクワに配置しています。この担当者がロシアでの日産の方向性を決めます。

---:ロシアが欧州という位置づけであれば、ルノーの主導でロシア事業を展開することが自然な流れと考えられますが、今年のモスクワモーターショーのプレスカンファレンスでは、日産からアフトワズとのアライアンスについてのメッセージがありました。これが意味するところは。

パーマー:ルノーと日産のアライアンスは1999年からです。両社はそれぞれ得意な市場を棲み分けてきました。時にはセグメントとして両ブランドで重なる車種もあります。ブランドの性質としてルノーは欧州で強く、日産はアメリカと日本で強い。それぞれテリトリーがあり、得意なマーケットで成長し、事業を拡大してきました。しかし、ある国ではルノーが主導的立場で日産に指示を出す、別の国では日産が主導で、という体制ではありません。両社は世界のどの国においても主従の関係にはないのです。

ロシアにおいてルノーは古くから市場に進出していました。実際にルノーは現在、日産よりも多くのクルマをロシアで売っています。アフトワズとルノーは以前から深い関係があり、そこに日産も参加しました、というメッセージをモーターショーでは伝えました。

■量産効果、部品、サプライヤーをシェア

---:ロシアでの日産、ルノー、アフトワズ連合はどのように連携し、相乗効果を発揮していくのでしょうか。

パーマー:日産が今年のモスクワモーターショーで発表した新型『アルメーラ』は、アフトワズのトリアッティ工場で生産します。そこはもともとアフトワズの工場なので日産の立場は生産委託です。このように、日産とルノーがアフトワズの工場をシェアし、かつ共用部品を増やしてゆきます。

---:つまり生産工場や部品、サプライヤーを共用するという形でシナジーを高めていくということですね。

パーマー:そうです。言いたいことは量産効果、部品、サプライヤーの共用です。アフトワズの工場を使うことによって、アフトワズもルノーも日産も製造コストが下がりました。これがシナジーです。

---:日産ブランドとルノー、アフトワズのブランドはロシア市場でどのように棲み分けますか。

パーマー:日産ブランドはロシアで非常に強く、車両によっては顧客にプレミアムカーと受け取っていただけているものもあると自負しています。主なラインナップはSUVで『パトロール』、『ムラーノ』、『キャシュカイ』、『エクストレイル』などです。今年のモスクワショーで発表した『アルメーラ』セダンは日産ブランドのエントリーカーとして投入します。したがって、アルメーラからキャシュカイ、ティアナ、パトロール、そしてインフィニティとステップを設けることができました。

ルノーのロシア主力車種は『ロガン』でアルメーラと部品を共用しています。ルノー・日産・アフトワズ連合としては、LADAがブランドとして最下層にあり、その上にダットサン、ロガンとアルメーラから上にルノーおよび日産ブランドは存在します。このあたりの価格帯は似通っていますが、日産とルノーの顧客は違います。日本車を購入したい層もいれば、欧州車を購入したい層もいるということです。そして頂点にインフィニティが存在します。

---:世界に類を見ないフルラインナップ体制ですね。こうしたブランドフォーメーションは他の国でも通用するとお考えですか。

パーマー:一般論としては他の国でも大体同じでしょう。ただ、西欧では少し複雑で、やや『メガーヌ』などを擁するルノーブランドが強いですね。シナジーは原価低減、購買力の面でも発揮されるものなので、エンジンなどパワートレーンのシェアも考えるべきです。

■ダットサン、品質基準のローカライズで少量生産と低コストを両立

---:LADAと日産ブランドの間に現れるダットサンブランドの車について教えて下さい。ロシア市場で展開するダットサンブランドの車両は、アフトワズのモデルのバッチ違いと考えてよろしいでしょうか。

パーマー:ダットサンは価格重視の顧客を対象としたローカルブランドですがLADAの兄弟車ではありません。ダットサンはインドネシアや中国、ロシアで作りますが、それぞれの国で作られる車は同じではありません。

---:つまり各国でローカライズされたクルマをダットサンブランドとして展開するということですね。地域ごとに車両を適応させるということは、結果として少量生産になります。少量生産とローコストは両立するのでしょうか。

パーマー:コストダウンには二つの方法があります。ひとつは一車種で数多くの生産を行なうこと。これはボリュームによるコストダウンにつながります。もうひとつは製品が満たす品質基準を下げること。ダットサンブランドではこちらの手法を取ります。どの国にもローカルの品質基準がありますが、グローバルスタンダードに合わせてしまうと価格が上がります。たとえば、『マーチ』はグローバルスタンダードで生産していますが量産することでコストダウンにつなげています。一方ダットサンブランドでは、技術面でローカル基準を採用します。安全基準、環境基準はローカル対応です。そうすることで、グローバルスタンダードで展開する車種より安く提供します。数についてはロシアであればロシア市場のためだけにつくるため、少なくなります。

---:ローカルスタンダードを採用し、ローカルサプライヤーやローカルメーカーとの関係を構築する。この取り組みによりローカライズされた車両のコストを可能な限り下げると。

パーマー:ローカルサプライヤーの部品を採用する場合、日産のスタンダードには満たないパーツもあるでしょう。ダットサンの場合はサプライヤースタンダードを採用します。

---:ダットサンプロジェクトはパーマー副社長が主導するプロジェクトなのでしょうか。日産の考える手法によるフルラインナップ体制は、とても野心的なチャレンジですね。

パーマー:プランニング、クルマのコンセプトは私が、販売については片桐隆夫副社長が担当しています。私は技術者出身ですので、これが非常に大変なことであることは実感していますが、とてもやりがいのあるチャレンジですよ。

(インタビュアー:三浦和也、文責:土屋篤司)

《レスポンス編集部》

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