『Aクラス』のAは、“Attack”のA。
プレゼンテーションで語られたその言葉どおり、メルセデス・ベンツの新型Aクラスは攻めの姿勢で大変身を遂げた。
オーストリアの真下、スロベニアで行われた試乗会で対面した姿からは、美しさ、スポーティさ、優雅さといったエモーショナルな、まず心に訴えかけてくる要素が最も強く感じられる。
ボディサイズは全長4292mm×全幅1780mm×全高1433mmで、先代より全高が18cmも低くなり、遠目から見るとまるで『Cクラス』あたりが近づいてくるような存在感がある。
好評だったコンセプトモデルから残されたジュエリーのようなフロントグリルや、切れ長のヘッドライト、セクシーな表情をつくるキャラクターラインなどが、新世代にふさわしい個性を創りだしている。
ただ、リアにまわってみるとデザインは大人しくなり、もう少し刺激があっても良いのではと感じた。
とはいえ、航空機からインスパイアされたというインテリアはとてもクールで、シートやドアトリムなどのタイプは「スタンダード」、「スタイル」、「アーバン」、「AMGスポーツ」など多彩にそろう。
マルチメディアシステムやiPhoneとの連動で、インターネットやFacebookなどが自在に楽しめるところも今ドキのプレミアムだ。
室内空間は頭上はややタイトだが、後席の足元は『Bクラス』を凌ぐスペースがある。
収納は小さめながらドアポケットやコンソールボックスなどがあり、ドリンクホルダーも2つ装備。ただこれは、小柄な女性のシートポジションだと手を後ろに伸ばす位置になってしまうのが気になった。
ラゲッジはフラットで深さがあり、通常341リットル、最大1157リットルと十分な容量だ。
ガソリンエンジンモデルは、1.6リットルの「A180」と「A200」、2.0リットルの「A250」(すべてブルーエフィシェンシー)と「A250スポーツ」が設定されているが、今回の試乗車は7G-DCTのミッションを積むA250とA250スポーツのみ。
標準とAMGパッケージの2グレードをドライブしたが、どちらもボディ全体がしっかり一体となって、力強くなめらかに加速していく気持ち良さがある。
ステアリングの座りやキレも大袈裟にスポーティを演じてはおらず、扱いやすかった。
タイヤは標準が17インチのミシュランで、街中から高速まで乗り心地がとても良い。AMGパッケージは18インチのグッドイヤーで、前席は良かったが後席では高速でのブルブルとした振動が目立った。
海辺の街から高速道路、そしてワインディングへとドライブしていく中で、新型Aクラスが決してカッコイイだけのコンパクトではないことを実感したが、もうひとつ、コリジョンプリベンション・アシストといった先進の安全装備が数多く付いていることや、2015年導入の排ガス規制・EURO6をすでにクリアするだけの高い環境性能を手にしていることに、コンパクトクラスのレベルをリードしていくというメルセデス・ベンツのプライドを感じた。
気になる日本デビューは、メルセデス・ベンツ日本によると時期も導入グレードも今まさに議論の真っ最中とのこと。本国では2013年早々にも2.0リットルターボ搭載のトップモデル、「A45 AMG」が登場するとアナウンスされているだけに、少しでも早い日本上陸をお願いしたい。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★★
まるも亜希子/カーライフ・ジャーナリスト
映画声優、自動車雑誌編集者を経て、カーライフ・ジャーナリストとして独立。現在は雑誌・ウェブサイト・ラジオ・トークショーなどに出演・寄稿する他、セーフティ&エコドライブのインストラクターも務める。04年・05年にはサハラ砂漠ラリーに参戦、完走。日本カー・オブ・ザ・イヤー(2005-2012等)選考委員、AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員。公式ブログ『運転席DEナマトーク!』他アップ中。ニッポン放送『DRIVE with ECO&DREAM』レギュラー。