2011年3月と6月にそれぞれフルモデルチェンジを行った『S60』と『V60』、どちらもボルボの主力となるモデルだ。
搭載する1.6リッターのターボ付き直噴エンジンが、そうした排気量を忘れさせるほどに低回転域からモリモリとした太いトルクを発揮し、それと組み合わされるDCTも、タイトな繋がり感が心地良い一方でトルコンATと変わらぬ微低速域でのスムーズさも実現してくれるのは、同じパワーパックを採用するV70ですでに確認済みだった事柄。
しかし、こちらでのより大きな驚きは、そのフットワークの高度な仕上がりぶり。それは、お世辞ではなく「メルセデス/BMWという“両巨頭”の作品に負けない」という印象であったからだ。
“スポーツサスペンション”を採用するゆえに基本やや硬めではあるものの、それでもストローク感はたっぷりあって快適性は上々。速度が高まるとそれに連れてフラット感もアップし、高速クルージング時の走りの好感度は、間違いなく「ボルボ車史上、最上!」だ。ちなみに、セダンのS60とワゴンのV60では前者がしなやかさで勝るが、その差はわずか。パワーパックが“ダウンサイズ”されたゆえ前輪の負担が小さい事もあってか、ハンドリングは軽快でここでも「ボルボ車史上、最良」というフレーズを使いたくなる。
“シティ・セーフティ”の標準採用や、全車速追従機能付きクルーズコントロール機能を含む“ヒューマン・セーフティ”を、わずか10万円でオプション設定という点も評価に値する一方、カメラを用いてドアミラーの死角内に入った後方車両を検知する“BLIS”は、誤報が多過ぎてもはや役に立たず。ライバル各車で一般化しつつある“誤審率”が低いレーダー方式に早くチェンジをして欲しい。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★★
河村康彦|モータージャーナリスト
1985年よりフリーランス活動を開始。自動車専門誌を中心に健筆を振るっているモータージャーナリスト。ワールド・カーオブザイヤー選考委員、インターナショナル・エンジンオブザイヤー選考委員。