メルセデスベンツ『Vクラス』は現行が2代目。2003年10月に導入されたときには『ビアーノ』という新車種として登場したが、06年の改良を機にVクラスの名前に戻した。2011年1月にはフェイスリフトとともに装備の充実化が図られ、このモデルに最近試乗した。
外観デザインはフロントグリルに大きなスリーポインテッドスターを持つ。Cクラスなども含め、最近のメルセデスベンツはこの方式を採用する車種が増えている。
内装は本革シートや木目パネルなどによって豪華な雰囲気が演出されている。2列目にゆったりしたキャプテンシートを備え、3列目に至るまで3点式シートベルトを装備した独立式のシートが用意されるのはメルセデスベンツらしいところ。
搭載エンジンはV型6気筒3.5リットルで、電子制御5速ATと組み合わされる。乗用車用の最新エンジンと違って、パワー&トルクは190kW/340Nmとやや抑えた設定とされる。
車両重量が2270kmに達する重量ボディなので、それに合わせた味付けのエンジンである。ただ、組み合わされる5速ATとともに、今ではさすがに古さを感じさせるパワートレインになってきたのは否めない。
力強さは十分ながら、踏み込んだときのレスポンスなどは、クルマの性格も関係して敏感にしていないかも知れないが、一瞬のタイムラグがひと世代前のエンジンを感じさせる。5速ATの変速フィールもそれなりといった感じである。
それ以上に古さを感じさせたのは足回りで、どっしりした安定感を感じさせる部分はあるものの、印象は商用車系というかトラック系の乗り心地レベルにとどまる。
充実した安全装備など、大きな魅力となる部分はあるものの、日本の最新ミニバンが大きく進化していることを考えると、必ずしも優位立つ部分ばかりではない。積載能力の高さなど、このクルマならではの魅力を求める人が意識して選ぶモデルだ。
松下宏|自動車評論家
1951年群馬県前橋市生まれ。自動車業界誌記者、クルマ雑誌編集者を経てフリーランサーに。税金、保険、諸費用など、クルマとお金に関係する経済的な話に強いことで知られる。ほぼ毎日、ネット上に日記を執筆中。