動力を持たない熱気球を風を読んで巧みに操る熱気球競技。国内最大のシーズン戦である熱気球ホンダグランプリの最終戦、2011とちぎ熱気球インターナショナルチャンピオンシップが栃木~茨城の空域で23日(水・祝)から繰り広げられている。
世界選手権であるこの大会には例年、世界から強豪バルーニストも来日参戦している。今年は福島第一原発の放射能漏えい事故の影響で、各分野のスポーツ選手や文化人が来日を取りやめるケースが相次いだが、今回のチャンピオンシップにおいては世界の強豪の参戦がむしろ増えた。エントリー32機のうちワールドチャンピオン歴あり4機というハイレベルなレースとなっている。
「日本が厄災に見舞われている今だからこそ積極参加したいと、普段以上に有力選手が参戦してきてれたんです。アメリカの熱気球連盟は『大変だろう、ぜひ役立ててくれ』と、7000ドルのドネーションをポンと出してくれた。夜にツインリンクもてぎで行われるバルーンイリュージョンへの参加率も、日本チームよりも彼らのほうが高いくらい」
大会関係者の一人は感慨深げに語る。イギリスから参戦した世界ランキング6位のデビッド・ベアフォード選手は、原発被災に苦しむ福島県のマスコットであるキビママ、キビマルを大きくあしらった愛機『キビタン』で参戦し、応援の意を示した。
もっとも、参戦してきたトップバルーニストたちは完全に世界戦での1勝を取りに来ており、競技はシビア。ターゲットへの寄せは、風まかせというのが信じられないほど正確で、上位陣は地上の巨大な×印にごく近いところにマーカーを落としていた。
翌24日の競技終了時点での暫定順位は1位が埼玉県の会社員上田祥和選手、2位が佐賀県のデザイナー沼田実選手と、日本勢がワンツー。が、その背後には旅客機パイロットで世界ランク4位のニック・ドナー選手(米)、世界ランク1位の不動産業者ジョニー・ベレトン選手(米)、世界ランク7位の投資家ジョー・ハートシル(米)と、強豪たちが逆転を虎視眈々と伺う。結果は最終日が終わるまで、まさに神のみぞ知る、である。
そんなシビアな熱いバトルも、地上からはカラフルな熱気球がのんびりと浮かんでいるようにしか見えないのが、熱気球競技の面白いところだ。競技には1か所から一斉離陸するパターンと、選手が任意の場所から飛び立ってターゲットなどを目指すパターンがある。離陸のパターンや競技種目は当日、気象条件などをみて決定されるが、23日は早朝、午後とも壮観な一斉離陸となり、観戦する側にとっては嬉しい一日となった。
観客は離陸後、ターゲット近辺まで車などでアプローチし、よりどりみどりの気球がマーカーをターゲットに落とすのを見て、拍手を送る。マーカーを投下してから上昇に転じる熱気球からは、声援にパイロットが手を振って応えたりする。最終フライトは27日早朝。観戦のチャンスはまだある。