日本2大カテゴリーの競演「JAF Grand Prix SUPER GT & Formula NIPPON FUJI SPRINT CUP 2011」(11月11〜13日、富士スピードウェイ)における“各戦線”それぞれの展望について、柳田真孝、谷口信輝、塚越広大の3選手が語る。
まずSUPER GTのGT300について、チャンピオン谷口のマシン、BMW『Z4』にとって富士は得意中の得意と言えるコース。実際、9月のシリーズ戦では圧勝しているが……。「あれ以降に性能調整がありましたからね。あの時ほどの優位性はないです」。GT300は戦力均衡化のための性能調整がシーズン中も繰り返され、さらにはFIA規定車(主に輸入車)とJAF規定車(主に国産車)で得意なセクションが異なってくるなど、複雑な技術背景がある。
ただ、あの時ほど優位ではなくとも「たとえばオートポリスなどよりは、直線の長い富士の方が間違いなくマシンに向いている」ので、やはり谷口と番場琢のBMW Z4が優勝候補最右翼と言ってよさそうだ。谷口自身は「ポルシェ勢も富士は得意だし、アストンマーティンやランボルギーニ、国産勢では最近好調な『レガシィ』あたりも……」と、対抗馬の動向を睨んでいる。シリーズタイトルを争ったフェラーリ458に関しては「富士は得意とは言えないと思いますが」、地力のあるチームだけにノーマークにはできないだろう。
続いてGT500。今季はシリーズ戦で苦闘していたレクサス『SC430』勢だが、ホームコースの富士では唯一の勝利を挙げており、やはりここでは一日の長がありそうだ。柳田(日産『GT-R』)も塚越(ホンダ「HSV-010 GT」)も、それは先刻承知。「やはり彼らの地元だし、特性的にSC430が合っているのは確かだと思う」と柳田が言えば、塚越も「富士でのSC430は強いですよ。特に9月のレースでは予選で前を固められましたからね」と同調する。
しかし、「今度はウエイトハンデがない状態の戦いになるので、そこで僕たち(日産とホンダ)がSC430にどう対抗できるか」と、アウェイの地での勝機を懸命に見出す構えだ。3メーカー入り乱れての混戦になってくると、面白さが一層増す。
そしてFニッポン。今年は決勝が一発勝負となったが、特別戦ならではの特殊な予選方式が勝敗のカギを握るかもしれない。各車1台ごとの実質1周アタック勝負で、ラップタイムと最高速をポイント化して、その両方を合算した結果で決勝グリッドが決まるのだ。
「1周のラップタイムが速い仕様のマシンが、必ずしも最高速も出るとは限りませんからね」と、塚越もこれには思案顔。「そのポイントの仕組みがどうなるか次第ですけど(取材時は詳細未決定)、基本的には1周のタイムが速いセッティングを求めていくことになると思います」。Fニッポンでは、今季DOCOMO TEAM DANDELION RACINGに移籍し、過去に何人ものドライバーをNAKAJIMA RACINGでチャンピオンに導いてきた知将・田中耕太郎エンジニアと組んでいる塚越。今季ホンダ勢最速ランナーの地位にある彼の陣営が採る作戦にも、大いに注目したい。
GT500とGT300に話を戻すと、「クラス混走ではない」「ローリングスタートではなくスタンディングスタート」「ピットストップがない」というのが、シリーズ戦と比べての3大“異要素”となるが、一番大きな違いとなるのはどの要素だろうか?
柳田と谷口は「やっぱりスタンディングスタート」と口を揃える。大きな順位変動の可能性があるスタート方式だけに、重要度は極めて大きいようだ。そして塚越は「スタートももちろんですけど、それも含めて、ずっとひとりで走りきるということが、大きな違いに感じられましたね」と昨年の印象を語る。
チームワーク、チームプレーも重要だが、いつも以上にドライバー個人の戦いとなる面が強いことは柳田も認めており、トップドライバーが個々のプライドをぶつけ合う真剣勝負となることが最大の魅力と言えそうだ。“一発勝負”だけに「過激なファイトが見られるかもしれませんよ」とは谷口の弁。
今年で2度目とあって、ドライバーもチームも戦い方が分かってきているだけに、より白熱した好レース相次ぐ大会になりそうだ。