『プリウスα』は東日本大震災の影響で発売が1か月ほど遅れたが、その間にも予約注文を集めていたので、発売された時点ですでに1年待ちという圧倒的な受注台数を記録した。
すでにベースの『プリウス』がたくさん走っているので同じクルマじゃ嫌だという人や、プリウスの室内空間やラゲッジスペース、乗車定員などに物足りなさを感じていた人が、一気にプリウスαに飛びついた結果だ。この売れ行きは大したものだが、納車が1年以上先というのでは、勧め方にも困ってしまう。
プリウスの名前が付いていて、見た目もプリウスと似た印象があるが、ボディパネルはプリウスと同じものはひとつもなく、インパネデザインも部分的に似ているが全体的には大きく異なる。
それ以上に違うのが走らせたときの印象で、プリウスに比べると格段に乗り心地や静粛性が良くなっている。走りの質感という観点から見たら、プリウスとは全く違うクルマだと言っても良い。特に17インチタイヤを履いたツーリングセレクションが好印象だった。
動力性能はプリウスと同じで車両重量が重くなっているので、走り出す瞬間はややもっさりした感じがあるが、走り出してしまえばそれも気にならない。ギア比によってカバーしている部分もあるので不満を感じるような性能ではない。
ただ、いろいろな意味で良い面と悪い面とを合わせ持つのがプリウスαだ。たとえばより走りの質感に優れた17インチタイヤ装着車は、最小回転半径が『ランドクルーザープラド』と同じ5.8mに達する。ボディが違うのでは取り回しの感じはプラドとは異なるが、16インチタイヤの標準車なら5.5mなのだ。
室内空間が広くて3列目のシートにも大人が座れるくらいの空間があるのは良い点だとしても、全高が1575mmでは普通のタワーパーキングには駐車できない。何とか1500mmに収められなかったものか。
5人乗りより7人乗りのほうが魅力的だが、リチウムイオン電池搭載車は価格が高くなる上に生産が厳しく、納車は完全に1年以上先になる。エコカー減税が終わった後でないと手に入れることができない。ニッケル水素電池を搭載した5人乗りも納期をしっかり確認する必要がある。
魅力的な部分も多いクルマなのに、お勧めしきれない点もいろいろあり、もどかしさを感じさせられるクルマだ。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★
松下宏|自動車評論家
1951年群馬県前橋市生まれ。自動車業界誌記者、クルマ雑誌編集者を経てフリーランサーに。税金、保険、諸費用など、クルマとお金に関係する経済的な話に強いことで知られる。ほぼ毎日、ネット上に日記を執筆中。