【インタビュー】ボルボのデザイン「人間が中心にいることを忘れない」

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デザイン部門のトップであるピーター・ホルベリー氏
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  • S60
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フルモデルチェンジしたボルボ『S60』の発表を機に来日した、ボルボ・カー・コーポレーション Vice President, Designピーター・ホルベリー氏に、『S60』を中心としたボルボのデザインの特徴を聞いた。

ホルベリー氏は先代S60の日本導入の際に来日、その後フォード北米デザインのトップに就任した。そして、現在はまたボルボへ戻り、デザイン部門を率いるトップとなっている。

----:新型S60のデザインコンセプトを教えてください。

デザインコンセプトは、もっともスポーティな4ドアのボルボを作るということがまず基本としてありました。たとえ静止状態でも躍動感というものを伝えたかったのです。

先代のS60をデザインする際、市場でもっと違うボルボというものを求める声にどうやって応えるかを考えました。そしてかなりドラマティックなアプローチをしました。その結果、S60は、そうした要望に応えることができたと考えています。

----:エクステリアとインテリア、それぞれのポイントはどこにあるのでしょうか

エクステリアは、スポーティでダイナミックな走りを反映したデザインとしました。特にフロントマスクは特徴を表す重要な部分。ひと目でボルボとわかるデザインにすることが重要でした。ボルボ伝統の直立したデザインから、『S80』に始まる丸みを帯びた新デザインへと移行しつつありますが、S60のフロントマスクは、まさに進化しつつあるボルボを表現した新しいフェイスとなっています。

いっぽうで室内は、ドライバーとして上手にコントロールが出来る空間であるべきだと考えました。S80、『V70』、『V40』などもフローティングセンタースタック(センタークラスター)を採用していますが、真っ直ぐなデザインでした。しかし、今回はドライバー側に角度を持たせ、よりコントロールしやすくしているのです。

例えばドイツブランドではテクニカルな方向に力を入れているメーカーが多い気がします。それはつまり、「人がクルマに運転されている」状態であると考えます。しかし、ボルボではより人間中心のデザインであることを大切にしています。ヒューマンタッチ、そしてスカンジナビアのシンプルなデザインがこれを実現します。人がクルマを運転するという考え、つまり、あくまでも基本は「人」にあることを忘れてはいけません。

----:資料によると、レーストラックをモチーフとしたダッシュボードとありますが、これはどういうことでしょう?

S80、V70の開発の時に、デザイナーがスパ(お風呂)の感覚、リラックスできる空間という話をしました。その話をしている時に、そういえば、ベルギーにスパ・フランコルシャンというレース場があるという話になったのです。そこで、レーストラックをデザインに持ってきたらどうなるのかなと、ジョークで話し始めました。この発想からレーストラックの流れるようなコースデザインをこのクルマに活かしたいと考えました。最初は、スパ(お風呂)にいるようなリラックスする感じから、スパ・フランコルシャンがくっついたというユーモアあふれるエピソードなのです(笑)。

----:実際にスパ(お風呂)にいるようなリラックスしたデザインになりましたか?

ボルボはリラックスできるデザインを基本としていますので、それが非常に進化し表現されていると思います。

繰り返しになりますが、クルマがあまりにもハイテクすぎて操作がわからないということは、非常に危険なことだと思うのです。スカンジナビアンデザインは非常に静かで穏やかです。そこから派生して、これからはドライバーにとってより分かりやすいクルマづくりを目指す必要があると考えます。例えるならば、iPhoneやiPadのように本能的に(操作方法が)分かる、取扱説明書がいらない、そんなクルマが将来の理想形なのではないでしょうか。

そして、我々ボルボは「いい気持ち」という感覚が重要だと思います。いい気持ちとは、まず安全であるということ。だから安心な気持ちでいられる。もうひとつは、自分達がクルマをきちんとコントロールできていること。クルマに制御されるのではなく、自分達がこのクルマに関わっている。そんな気持ち、その心地良さがとても重要だと思うのです。

----:スカンジナビアンデザインとはどういうものでしょう?

そのクルマの出身国の文化というものはとても重要で、それがデザインに表わされ、それによって例えばドイツ車や、アメリカのクルマ、他の国との違いというものが想像できるのです。

このため、スカンジナビアの文化をデザインに反映するのは非常に重要で、これは、スウェーデン人などの社会性、国民性を非常に直接的に表わしています。それは、人に優しく、環境に優しくという古くからの文化なのです。そして今、世界は環境などの問題に対し、非常に注目が高まっています。つまり、デザインも含めて我々が表現することは、これからますます世界から注目を集める要素になって行くと考えています。

《内田俊一》

内田俊一

内田俊一(うちだしゅんいち) 日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かしデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。保有車は車検切れのルノー25バカラとルノー10。

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