“RS”の名を持つスポーツモデルゆえ、エアロパーツで強面風に仕立てられたというのに上品で優美な貫禄がにじみ出る。アウディのデザインにはいつもながら恐れ入るばかりである。瞬発力を表現する背の低いボディ。
どんどん背を高くして若いうちから乗り降りを楽にして、足腰を弱らせようかという国産車を鼻で笑うかのような、美と速度に対するこだわりには惚れ惚れである。
V8の4.2リットルエンジンを搭載しているのだから、速くないわけがない。でも感動しちゃうのは「アウディ・ドライブセレクト」で選べる乗り心地の変化である。コンフォートにして走ると、なんだふつーじゃん、なのだが、これをダイナミックに切り替えると、とんでもない世界が繰り広げられる。
アイドリング状態から排気音が切り替わり、まさに重低音が腹に響く。これだけでも心拍数が速くときめくというのに、アクセルを踏み込んだとたん、排気音の轟きと同時に発揮される加速といったらもう。四輪駆動ゆえ、暴れるとか怖いとか、そんな感覚は微塵もなく、ただただ加速の美学の世界へ瞬時にひきこまれる感覚は、うっとりである。
エコエコ言いながらクルマ生活しているのは、電力消費量を抑えるためにスピーカーのボリュームをしぼり、ちーっちゃな音でロックを聞いているようなもの。RS5の加速を一回でも味わったら、うわっつらだけの自己満足エコが、いかに自分の人生の楽しみをうばっているかに気づくはず。エコなんて、ほかでいくらだってできるんだから、クルマはやっぱり楽しもうぜと、『RS5』は語りかけてくれるのだ。
■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★
岩貞るみこ|モータージャーナリスト/エッセイスト
女性誌や一般誌を中心に活動。イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。主にコンパクトカーを中心に精力的に取材中するほか、最近はノンフィクション作家として子供たちに命の尊さを伝える活動を行っている。JAF理事。チャイルドシート指導員。国土交通省 安全基準検討会検討員他、委員を兼任。