夏の暑い日に試乗して、エアコンを効かせた状態だったにもかかわらず、信号待ちなどで停車するたびにエンジンが確実に停止した。とても良く止まるアイドリングストップ機構という印象的だった。また新開発の3気筒エンジンはアンバランスマスを装着することで、アンバランスシャフトなどを使うことなく、縦方向の振動を横方向に変換し、それをマウントなどで吸収しているという。振動や騒音について3気筒であることのネガを感じさせないので、とても良く仕上がっていると思う。市街地ではロードノイズが多少気になるが、高速クルージングに入ると最も気になるのがドアミラーあたりからの風切り音だったから、全体的な静粛性はコンパクトカーとしては上々のレベルだ。ボディパネルの合わせ目や内装の樹脂パネルの質感など、内外装の仕上がりはタイ製であることの弱点が表面化している部分もある。タイ製であることを積極的にアピールしないのは、そうした点で“後ろめたさ”があるからなのかと勘繰ってしまう。日本のユーザーとしては、タイ製のマーチを輸入するのなら相応の価格的なメリットが欲しいところだが、それは少しも具現化されていない。タイで安く作ったことのメリットは、日産が、あるいはゴーン社長が独り占めしてしまったのか。■5つ星評価パッケージング:★★★インテリア/居住性:★★パワーソース:★★★★フットワーク:★★オススメ度:★★★松下宏|自動車評論家1951年群馬県前橋市生まれ。自動車業界誌記者、クルマ雑誌編集者を経てフリーランサーに。税金、保険、諸費用など、クルマとお金に関係する経済的な話に強いことで知られる。ほぼ毎日、ネット上に日記を執筆中。