NTTドコモの主要端末に「地図アプリ」としてプリンストールされている「いつもNAVI」。昨年夏にauへの展開、そして昨年秋とこの春にはドコモ版のアプリをバージョンアップしてインタフェースの刷新やオートGPSへの対応、レスポンスの改善などをおこなった。
改良のポイントと今後の展開について、サービス企画部部長の上野弘貴氏に聞く。
◆auのBREWアプリ開発は会員の獲得にとどまらない意義があった
----:上野さんには昨年夏にもお話しを伺いました。当時はau端末向けの「いつもNAVI」が登場したタイミングでしたが、あれからまもなく1年が経ちます。
上野:EZ助手席ナビ以外のナビゲーションアプリとしては、当社が「いつもNAVI」で初めて参入したのですが、会員の推移は堅調といったところです。ドコモやソフトバンクのようにAPIが豊富に揃っているJAVAベースのアプリとは異なり、BREWはケータイのOSと一体化していて、アプリの作り込みはかなり大変でした。またキャリアへの申請やパケット利用の制限などがあり、au版の開発を通じていろいろな学ばせていただきました。
----:やはり主要3キャリアにナビゲーションを提供できた意義は大きい、と。
◆オートGPSで“おせっかい”ではない情報提供を
----:一方、ドコモ版もこの1年で着実にバージョンアップを重ねてきましたね。
上野:昨年の11月に「地図アプリ」をバージョンアップして、UIを刷新しました。新機能のオートGPSにも対応しています。
----:オートGPSを利用した地図アプリの機能はどのようなものでしょう。
上野:オートGPSは、待受状態でも5分に1回、位置情報を送信しますが、この機能を利用して、ディズニーランド/ディズニーシーと連携して、いまいるエリアをお持ちのケータイ上に表示させることができるというものです。オートGPSと地図アプリに登録していただいた状態で、ディズニーランドの敷地内に入るとウェルカムメールが、出るとサンキューメールが届いたり、パーク内にいるときはお楽しみ情報などを、居場所に応じてメールでお送りします。
」
----:ディズニーファンには受けそうな機能ですね。また、それ以外のオートGPS機能は?
上野:位置情報と連動し、今いる街のご当地グルメ情報などをあなたのケータイに届ける「地図アプリメール」も用意しています。また、地図アプリには訪問した都道府県や市町村を塗りつぶしていく「訪れた街」というお楽しみ機能がありますが、オートGPSに登録していれば、アプリを立ち上げていなくても訪問時に自動的に登録されます。
----:アプリを立ち上げずに「訪れた街」の登録ができるのはいいですね。いつも身につけているケータイだからこそ魅力的なサービスになりそうです。ご当地情報の区分けは何がベースになっているのですか。
上野:iエリアがベースになっておりまして、全国約500エリアあり、グルメ情報は約8000件揃えています。
----:オートGPSを利用するに当たって難しかったポイントは?
上野:あまり広告色の強いプッシュメールですと、やはりユーザーは好ましく思いません。“おせっかい”にならないように、あくまでも自然なカタチで情報を提供するように心がけています。
◆メーカープリインだからしなければならないこと
----:GW前の4月中旬には、またバージョンアップしましたね。この改良のポイントは。
上野:UIなどの目に見える部分は昨年末のバージョンアップで刷新しましたので、今回は、サーバ周りのチューニングをおこない、検索や画面遷移、地図表示といったレスポンス面の向上を図りました。
----:サーバのチューニングによってサービスを利用している人すべてが恩恵を受けられるというのは、クラウドサービスならではのメリットですね。
上野:そうですね。ユーザーの手を煩わすことなくこちら側でアプリケーションを進化させることができるというのは、FIXタイプのカーナビとの違いと言えるかも知れません。
----:昨年末のバージョンアップでUIをガラリと変えましたが、「いつもNAVI」を使っていて思うのは、機種対応をきっちりおこなってくるところですね。タッチパネル液晶でも、ネイティブに対応してくるあたりは丁寧に作り込んでいるな、と感じます。
上野:ドコモ端末向けにプリインストールでアプリを提供するようになったのが直接のきっかけでしょうね。当社は2006年にN903iとF903i向けに提供したのですが、Nはシリーズ初のVGA液晶、Fは横画面にもなる“スイングケータイ”でした。端末プリインですから、端末の仕様に合わせて動作させねばなりませんでした。
----:初めてのプリインアプリがかなり特徴的なモデルだったのですね。
上野:VGAはすごくメモリを消費しますし、横対応ではユーザーがいつ横にしてもいいように、多くの検証を重ねる必要がありました。この経験がありますから、“機種対応は当然やるべきもの”という開発姿勢で臨んでいます。
◆ナビゲーションとしての総合力に自信
----:ケータイナビは通信端末であるという特性を活かして、乗換案内や徒歩ナビを組み合わせた総合ナビだけでなく、車載型カーナビとは異なる多機能化を実現するにいたりました。ただ、この多機能化の流れは昨年の末あたりで一段落付いた感があります。一方で、各社は特徴的な機能をより進化させたり、UIをより洗練させる方向で改良を加えています。
上野:車載カーナビはクルマの道案内をすればいいのですから機能的にはシンプルです。しかし、ケータイナビはカーナビだけでなく乗換案内から徒歩ナビといった総合ナビゲーション機能など、ある意味どのような要求に対しても応えられる機能をもっています。ただ、多機能化が進むにつれて、ユーザーが求めるべき場面に適切な機能をどのように提供するかというUI設計が大きな課題になってきました。何かに特化してしまうと何かを捨てなくてはいけない。そのあたりの強弱は難しいですね。
----:では、「いつもNAVI」はどのようなターゲットに向けたものにしようとお考えですか。
上野:われわれとしては、端末プリインストールの「地図アプリ」として最大公約数的な機能を提供しつつも、より高度なナビ機能を求める方にも満足していただけるものを用意せねばなりません。ひとつのアプリの中で2つの顔をもたせる必要があります。この機能面の幅広さに加えて、地図会社の強みである地図の見やすさや詳細さ、さらに交差点名称やジャンクション名も録音データで提供しているなど、ナビゲーションとしての機能で見ると、他社に負けない総合力を持っているという自信はあります。
----:その総合力を生かせるUIが実現できればいいですね。
上野:たとえば、ユーザーの利用履歴に応じた機能表示のレコメンドや、ダウンロードするときに、多機能モード/シンプルモードをプッシュできれば素晴らしいですね。
◆ナビや地図アプリは簡単に他のCPが立ち入ることのできない領域
----:前回のインタビューで、上野さんは「われわれとしてはケータイを使っている人の半分はナビゲーションのサービスを利用して欲しい」と語っていましたが、ケータイナビサービスの今後を、どのように見通していますか。
上野:ナビを使う人はもっといていいはず、という認識に変わりはありません。私たちの強みはドコモさんとも一緒にサービスさせていただいているところです。オートGPSにしても、端末対応にしても、キャリアと一緒にすすめられるメリットを活かして、ナビサービスを身近なものにしていきたいですね。
----:ゼンリンデータコムは今年で設立10周年、またケータイ向け地図/位置情報サービス(「ゼンリン携帯まっぷ」)がスタートしてから6月で10年を迎えます。この10年を振り返って、いかがでしょうか。
上野:iモードで地図サービスを2000年にスタートした頃は、端末の解像度は小さく、検索のPOIも基本的なものしかありませんでした。それがたったの10年で様相は全く変わりました。当社は2006年にN903iとF903iに地図アプリのプリインストール提供を始めましたが、そこからの端末の進化は急速でした。サービスを始めた2000年当時から比べると、今の端末は信じられないくらいの処理性能をもっています。
----:確かに、ナビゲーションサービスの世界も大きく変わりました。PNDの爆発的普及やAV一体機の低価格化、スマートフォンの高機能化など、人びとにとってナビサービスはかなり身近なものになったのではないでしょうか。
上野:この先10年どういった機能になるのかというと、まったく予測はできませんね。ただ、ナビや地図アプリは簡単に他のCPが立ち入ることのできない領域です。先行したメリットを活かしつつ、端末の進化を活かした進化をさせていきたいと考えています。
【アプリ概要】
■アクセス
iモード:メニューリスト>生活情報【乗換/地図/交通】>地図・ナビゲーション>ゼンリン いつもNAV
Yahoo!ケータイ:メニューリスト>交通・グルメ・旅行>地図>ゼンリン・いつもNAVI
EZweb:au oneトップ>カテゴリ(メニューリスト)>地図(国内)>ゼンリン・いつもNAVI
■利用料
ドコモ:月額315円
ソフトバンク:月額210円/315円/367円
au:月額210円/315円
■公式サイト(PC)
ゼンリン いつもNAVI
http://www.zenrin-datacom.net/mobile/