セダン不調といわれて久しい昨今、『マークX』の立ち位置は微妙だ。『クラウン』ほどオヤジじゃなし、『カローラ』は有り得ないし、かといってBMWは買えないし。失礼覚悟で言うと、どっちつかずの落ち着き先というイメージで、ゆえに乗り心地も万人受け狙いのチャラさが際立つものだった。
だけど新型。思わずうなった。なんだこの気骨感あふれる手ごたえは? じわりと確実に踏み込んではじめて反応するアクセル。パワステにいたってはずしりと重く、「いやあ、最近は女性に気に入られないと売れないんスよ」というヘラ男の意見を真に受けたら、絶対につくらない手ごたえ感である。だって私、重くていやになっちゃったもん。
重い。たしかに重い。でもそれが心地いいのは、まちがいなくこのクルマが走りのいいセダンという軸をぶらさずに、きちんと作り上げてきたからだろう。そう思うとのびやかで存在感のあるデザインも、色気が倍増してみえる。ユーザーに迎合か、コンセプトをつらぬくか。男のセダンは、後者であるべきだと、マークXを見て痛感している。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★
オススメ度:★★★★
岩貞るみこ|モータージャーナリスト
1962年横浜市出身。いま一番購買力があるとされるアラフィー世代を代弁する軽妙な論調に定評あり。交通安全啓蒙に力を注ぐほか、子供たちに命の大切さを伝えるノンフィクション作家としても活動。近著に『ハチ公物語 - 待ちつづけた犬 -』(講談社青い鳥文庫)。