【メルセデス・ベンツ BlueEFFICIENCY テクノロジー】全方位の次世代パワートレーン開発、パーツ単位での取り組み

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【メルセデス・ベンツ BlueEFFICIENCY テクノロジー】全方位の次世代パワートレーン開発、パーツ単位での取り組み
  • 【メルセデス・ベンツ BlueEFFICIENCY テクノロジー】全方位の次世代パワートレーン開発、パーツ単位での取り組み
  • Cd値0.25を実現した新型Eクラスの空力ボディ
  • メルセデス・ベンツでは、新車に装着されるOEタイヤをタイヤメーカーと共に開発
  • 【メルセデス・ベンツ BlueEFFICIENCY テクノロジー】全方位の次世代パワートレーン開発、パーツ単位での取り組み
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  • 2009年1月のデトロイトショーで発表した『コンセプト ブルーゼロ』のパワートレーン搭載イメージ
  • フランクフルトショー会場前で充電中の スマートed とテスラロードスター
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空気抵抗の低減……Eクラスクーペで世界トップのCd値0.24を達成

「ブルーエフィシェンシー」が包括する環境性能技術は多岐にわたるが、中でも地上を走る自動車にとって永遠のテーマとも言えるのが、空気抵抗の低減技術だ。車高をより低く、車幅をより小さくすることで前面投影面積を減らすという方法もあるが、実際の開発現場では室内空間やボディデザイン等への影響が少ないCd値(空気抵抗係数)の向上が主な手段となる。

ここではC250CGIとE250CGIに新たに採用された空気抵抗低減技術を見てみよう。まず、いずれのモデルも採用しているのが「ラジエーターブラインド」と呼ばれる可動式フィンだ。これはエンジン冷却の必要がない時に、ラジエーターグリル内のフィンを閉じて空気抵抗を低減するものだ(C300等にも採用)。またドアミラーは両モデルとも空気抵抗の少ない新デザインに変更されている。

また現行Cクラス全車は、デビュー当時から空気の抜け穴となるスリット付のリアコンビネーションランプを採用している。これは空気の流れをスムーズにすることで、空気抵抗の要因となるテール部の乱流を防ごうというものだ。もちろんボディ底面のフラット化が徹底されているのは言うまでもない。

これらの改良により最新のCクラス(2008年モデル)ではCd値が3代目プリウスと並ぶ世界トップクラスの0.25となっている。ちなみに1993年当時の初代Cクラスでは0.30だったというから、この15年で0.5もの向上を果たしたわけだ。

また1984年に登場した初代Eクラス(W124型)のCd値は、ブルーノ・サッコのデザインによって0.29と当時から非常に優れていたが、これも最新のEクラスセダンでは0.25に向上。さらに、スタイリッシュな新型E250クーペでは世界トップの0.24という驚異的な数値を達成している。

◆タイヤの転がり抵抗を最大で17%低減

「ブルーエフィシェンシー」テクノロジーでは様々な燃費向上技術と並んで、転がり抵抗の低減も大きな柱として挙げられている。メルセデス・ベンツによれば、100km/h以下の走行では空気抵抗より転がり抵抗の方が燃費への影響が大きいというから、より優れた省燃費タイヤは燃費向上に欠かせないというわけだ。

そこでメルセデス・ベンツでは、新車に装着されるOEタイヤをタイヤメーカーと共に開発。抵抗の要因となる変形を抑制するため、ベルト(トレッド面の内部で樽の「タガ」のような役目を果たす)部分に高張力鋼板の層を採用。トレッドやサイドウォールのコンパウンドも最適化することで、転がり抵抗を最大で17%、Sクラス ハイブリッド ロングの場合は最大で10%低減したという。

◆「ブルーテック」……最新のディーゼル排ガス浄化技術

ディーゼルエンジン車と言えば、3リッターV6直噴ディーゼルエンジン(211ps/55.1kgm)を搭載し、トルクフルな走りと圧倒的な燃費性能で高い評価を得た先代EクラスのE320CDIが記憶に新しい。それはまさにディーゼルエンジンの性能に当時懐疑的だった日本市場への導入自体が快挙と言えた。

しかし欧州をはじめ、日本や北米などで今後導入される厳格な排出ガス規制をクリアするためには、これまで以上に高度な排ガスの浄化システム、いわゆる「後処理」が必要となる。2000バールという超高圧での燃料噴射を可能とするピエゾインジェクターやDPF(粒子状物質除去フィルター)の採用をもってしても、今後はそれ以上のクリーン性能が求められるからだ。

そこでメルセデス・ベンツが次世代ディーゼルエンジンに採用するのが、「ブルーテック(BlueTEC)」と呼ばれる最新のディーゼル排出ガス浄化技術だ。具体的には、排出ガス中に尿素水溶液を噴射するアドブルー(AdBlue)インジェクターとSCR触媒コンバーター(Selective Catalytic Reduction=選択還元触媒)から成る、いわゆる尿素SCRシステムのことを指す。その仕組みはアドブルーインジェクターによって排出ガス中に尿素水溶液を噴射してアンモニアを生成させた後、SCR触媒コンバーターで窒素酸化物(NOx)の最大80%を無害な窒素(N2)と水(H2O)に還元するというものだ。

すでに海外ではこの最新のブルーテックを採用した「世界一クリーンなディーゼルエンジン車」が発表されている。そして2010年には日本のポスト新長期規制に対応したブルーテック仕様が国内に導入される予定だ。

◆電気自動車……スマートのEVは2012年に一般販売を開始

究極のエコカーであるゼロエミッション車の実現は、もちろんメルセデス・ベンツにとっても最終的な目標の一つだ。その柱となるのがEV(電気自動車)と「F-Cell」(燃料電池車)である。

EVに関しては、2009年11月から新型スマート フォーツーのEVバージョン「スマート ed(electric drive)」の生産がフランス・ハンバッハ工場で始まる。

エンジンに代わってリアに搭載されるモーターは、最大出力30kW(約40.8ps)と最大トルク120Nm(12.24kgm)を発揮する。0-60km/h加速はガソリン車と同等の6.5秒で、特に初期の加速はガソリン車よりも速いという。最高速は100km/hで、ギアは一段のみ。バックはモーターを逆転させて行う。

スマートのEVとしては第二世代にあたるこのモデルは、容量14kWのテスラモータース社製リチウムイオンバッテリーを採用する。もちろん家庭用電源での充電が可能で、220V電源の場合は3時間でフル充電が可能だ。航続距離は115km(欧州のNEDC=New European Driving Cycle モード)に達し、100km走るのに掛かるコスト(電気代)は、ドイツの昼間電気料金で2ユーロ(約260円)だという。

生産台数はひとまず1000台で、2009年内にも欧州の主要都市や米国の一部などでリース販売をスタートする。そして2012年には通常のラインナップとして生産、販売する予定だ。

◆燃料電池車「F-CELL」への取り組み

水素燃料によって電気を発生させて走ることから、究極のエコカーと呼ばれる燃料電池車。1994年に世界で初めて燃料電池車を開発したメルセデス・ベンツは、さらに初代Aクラスをベースにした燃料電池車「Aクラス F-CELL(エフ・セル)」を開発し、日本でも2003年から実用走行実験を行っている。

さらにメルセデス・ベンツにとって初の「量産」燃料電池車となるが、Bクラスをベースにした最新の「Bクラス F-CELL」だ。

搭載される電気モーターは、100kW(136ps)と290Nm(29.6kgm)を発揮し、最高速度は170km/hに達する。また航続距離は初期のAクラス F-CELLの倍以上となる385km(NEDCモード)だ。水素燃料の充填は1回あたり約3分間で済むという。また従来難しいとされてきた超低温下での始動も、新型では−25度Cで可能にするなど、実用性を大幅に向上させている。

またリチウムイオンバッテリー(出力35kW、容量1.4kWh)を含めて駆動関連のコンポーネントはすべてサンドイッチ構造のフロアに収まるため、室内スペースはまったく影響を受けない。荷室容量も416リッターで、これは通常のBクラスの約2割減に留まる。また本革内装やCOMANDシステムなど一般の市販車と同等の快適装備も採用されている。

このBクラス F-CELLは2009年末に小規模での量産を開始し、2010年初めから約200台を欧州および米国で運用されるという。これに伴い、水素燃料ステーションといったインフラ整備も各地の政府機関や企業と共同で行われる予定だ。

◆メルセデスは次世代の自動車開発でも先頭を目指す

“BlueEFFICIENCY”のテクノロジーは、パワートレーンの範疇に限定されるものではなく、空力、ボディ軽量化、タイヤに至るあらゆる部品の改良に及ぶ。また、生産から廃棄まで、自動車の全ライフサイクルを貫徹する、いわば“Well to Wheel”での環境負荷低減を考慮しているところに際だった特徴がある。

9月におこなわれたフランクフルトショーでおこなったダイムラーの取材で、先進開発・研究 グループ担当のHerbert Kholer副社長は、「われわれは、特定のパワープラントを決めてそれだけの開発を集中させることはしない。利用シーン、マーケットや顧客層によってそれ ぞれに最適なパワープラントを提供する」と語った。今後もメルセデスは現状考え得るパワートレーンの開発を同時並行でおこなっていく構えだ。メルセデスの取り組みの背景には、脱石油時代に向けた自動車開発でも先頭であり続ける意欲と覚悟を示していると言えるだろう。

《丹羽圭@DAYS》

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