【D視点】お洒落力アップ!…ルノー カングー 新型

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カングー
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個性の見本

日本のルノーブランドのなかでは、ダントツに人気の高い小型荷客ハッチバック『カングー』の2代目が発表された。長さが180mm、ホイールベースが100mm、そして幅がなんと155mmも拡大されたので、初代とは別のモデルかと言えるくらいに大きい。

初代を踏襲した実用性がテーマのデザインは、見た目スッキリし、運転フィールもスムースで日本車に近くなったが、逆に先代のようなデザインの素朴さや、プリミティブな運転感覚は無くなった。これも完成度が増した結果なので、新規のユーザーには親近感が持てるが、従来のカングーファンは戸惑いそうなので賛否半ばの感じもある。

しかし、車幅の拡大により、今やブームとなっているミニバンのユーザーも、カングーを選べるようになったのは良い。室内の使い勝手が向上したにもかかわらず、全長が4215mmと短いので取り回しも楽なのだ。しかも、大きなミニバンから乗り換えれば、周囲にも優しく、エコにも貢献した気分になれる。

教育現場では個性化が叫ばれているが、カングーの他車にはない独特な使い勝手は、「他に似たものが全く無いのが個性」という、個性の見本のようなものだ。また、フランス流のお洒落も体験できるというオマケ付きなので、これまで、輸入車に敷居の高かった人にも、勧められる。

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カングーはカンガルーの仲間?

オーストラリアに始めて来た外国人が、見たことのない動物を指差して現地人に訊いたところ、外国語が解らない現地人は、「わからない」の現地語「カンガルー」と答えたそうだ。カンガルーの語源として中学の英語の教科書にも載った話だが、「跳ぶもの」を意味する現地語が変化したのが真実のようだ。

カングーは、カンガルーと似ているので、カンガルーをイメージしたネームのように感じてしまうが、何の関連もない全くの造語との由。しかし、室内の大きなカングーと、お腹の袋に子供を入れているカンガルーとは似ており、愛嬌のある姿にも仲間を感じさせるところもあり、カングーの語源を「カングリ」たくもなる。

ルノーと言われてすぐ思い浮かぶモデルは、『4』と『5』だ。或いはマニアの間では『アルピーヌルノー』や『8ゴルディーニ』を挙げそうだ。最近のルノーには個性的なモデルが見当たらないので、カングーを贔屓したくなるのであろうか?

商用車と乗用車との両方で1997年に発売された初代カングーは、乗用車が大好評で、あっという間にヨーロッパに広まるなど、新参者として侮れない優れものであったのだ。早々と、商用車のようなカングーをファミリーカーのメニューに加えたユーザーの見識に脱帽!

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不恰好のカッコよさ

どこから見ても美しい人の譬えに、「立てば芍薬座れば牡丹歩く姿はゆりの花」がある。しかし、絶世の美女は何をしても様になってしまうので、現状に満足して努力する気にならないのか、年月が経過しても味わいが深まらないことが多い。

プロポーションもお値段も抜群のイタリアのエキゾチックカーなど、ドレスアップをする気が起きないところは美女と似ている。しかも並みのドライバーでは、気を使うだけではなく、乗せてもらっている感じを払拭するのも簡単ではないので、眺めて楽しむことになりがちだ。

不恰好さと、お手ごろな値段のカングーは、その対極に位置する。親しみ易いので気軽に乗れるだけではなく、頭でっかちのプロポーションを堂々と主張したデザインは、潔いと言うか、開き直ったカッコよさがある。

割り切りの強いカングーと付き合うドライバーは、いいかげんな気持ちでいるとクルマに負けてしまうところもある。が、横並びの価値観を見直しているうちに、自然に自分なりのライフスタイルを主張できるようになりそうだ。気付いたら、お洒落力がアップしていることになる訳だ。

D視点:
デザインの視点
筆者:松井孝晏(まつい・たかやす)---デザインジャーナリスト。元日産自動車。「ケンメリ」、「ジャパン」など『スカイライン』のデザインや、社会現象となった『Be-1』、2代目『マーチ』のプロデュースを担当した。東京造形大学教授を経てSTUDIO MATSUI主宰。【D視点】連載を1冊にまとめた『2007【D視点】2003 カーデザインの視点』を上梓した。
《松井孝晏》

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