3 | 意外にデリケート? |
それはともかく、ちょっとした問題が起きた。塩用・胡椒用いずれも腕時計の「モニター用電池」のごとく、お試し用の塩と胡椒がちょっと入っていたのだが、それを使い切ったあとのことだ。
イタリアで買った粒を入れてもよく挽ける胡椒用に対して、塩用のほうは、市販品を入れると、どうもうまくいかなくなってしまった。上部のネジを調整しても、挽かれた塩がなかなか出てこないのだ。分解して底部のネジを浮かせて、塩が通る道を広げる“チューニング”を試みたのだが、今度は挽かずにそのまま落ちてきてしまう。
イタリアの塩じゃダメか? ということで、有名なフランス・カマルグの海塩を入れてみたのだが、これまたうまくいかない。「なんだよー」と落胆した。
やがて判明したのは、プジョーの塩用ミルは本来「クリスタルソルト」という程よい大きさの岩塩用であり、それより粒が大きい粗塩には向かないということだ。もちろん細かすぎる塩にも向かない。また、湿気を含んだ海塩を入れるのはご法度らしい。
クルマのプジョーといえば、欧州ではガンガン使われるクルマの代表である。さらにチュニジアなど北アフリカでは、いまだ『404』のトラックがコキ使われているのを目撃する。そのつもりで、塩用ミルも「どんな塩でもどんと来い」か、と思っていたボクがいけなかった。ちょいとデリケートな仕様だったのである。
そうしたなか今年春先にパリに赴いた際よく見れば、プジョー製ミル販売店の多くで、「プジョーの塩」なる商品を併売しているではないか。ボクはまだ買っていないが、どうやらクルマ同様ミルにも純正品が良いに違いない。
いっぽう、東京に住む義姉が使っているプジョーの塩用ミルは、いたって快調のようだ。聞けば、なんのことはない、そこいらのスーパーで見つけたドイツの岩塩とやらを入れているらしい。やはりプジョーの故郷がドイツに近いからか?
日頃仲がよくない親戚だけに自分より上手くいくのが悔しかったが、本人によれば「日本で岩塩は、詰め替え不能なミル付き容器入りばかり。ビン入りは結構捜索するのが大変だった」と苦労話を語っていた。
ともかく、プジョーの塩用ミルと塩とのマッチングの推理は、クルマ以上の深みがありそうである。そんなことを考えながらふたたび塩ミルを机上で分解し、その加工に見入っていたら、「早く元どおりにレストアせよ」と晩メシを作ろうとしている女房から怒られた。