敢えてシンプル路線への舵を切ったGARMIN
海外メーカーながら日本でも一定の人気を獲得することに成功したのがGARMINだ。家電やデジタル機器で海外メーカーが日本市場に食い込むのは、パソコンやオーディオ機器といった例外を除いてきわめて難しい。前例はシェーバーのブラウン、掃除機のダイソンくらいのものだろう。それほど難しい日本市場に進出したGARMINはどこに魅力があるのか。それは新製品である『nuvi205』を見るとよくわかる。
nuvi205は、世界中でヒットモデルとなった『nuvi250』、および『nuvi250Plus』の後継モデルだ。このシリーズは日本で主流となっている5インチ前後のディスプレイを搭載したPNDよりも一回り小さな、3.5インチディスプレイを採用するエントリーモデルという位置づけになる。
GARMINの最近の製品を見ると、ディスプレイを大型化したり、ワンセグチューナーなどの多機能化を押し進めるような、日本メーカーに追従する路線が多かった。エントリーモデルとしても、ワイド液晶を搭載した『nuvi205W』を昨年秋に発売している。ところが、新発売のnuvi205は一転して小型、シンプル路線に戻った。
まずnuvi205のアウトラインを確認しておこう。本体サイズが95mm×74mm×20mmと非常に小型のPNDで、セカンドバッグや上着のポケットにも無理なく収まる。位置情報はGPSオンリーで加速度センサーなどは搭載しない。メモリ容量は2GBと、最新の国産モデルよりかなり少な目になっている。バッテリーはリチウムイオンで、4時間以上の連続駆動が可能だ。もちろん車載の状態ではシガーライターから電源を供給できる。
機能としてはごくシンプルなもので、VICSによる渋滞情報には対応しないし、交差点、ICの拡大表示機能などもない(レーン情報はこの新モデルで追加された)。このようにないないずくしなnuvi205。引き換えに低価格という魅力があるのは当然だが、しかしそれは安かろう悪かろうということではない。
◆必要十分な機能で気負わず使える
ここまで読んで、nuvi205は性能が低いと思ってしまった人がいたら、それは大きな誤解だ。機能が少ないことと性能が低いことは違う。実際、nuvi205を使ってみると、その性能の高さに感心させられる。
まずナビの基本ともいえる位置精度。GARMINはもともと登山などに使われるハンディGPSという機器で名を馳せたメーカーだ。位置情報をロストすれば命の危険に直結するフィールドで鍛えたGPS受信のノウハウはまさに世界一といえるもの。それがPNDでも生かされ、ビルの谷間などGPSを受信しにくい状況でも高い精度を実現している。ジャイロセンサーを搭載したり速度信号を入力する高級ナビと比較しても目立って劣るようなことはなく、総合的には互角といってもいいほどの実力を発揮する。
位置精度と並んで特筆ものなのが、GARMIN独特の地図だ。極端なまでに簡略化してあり、言ってしまえば道路以外は何も表示しない。そのためチープにも見えるが、しかししばらく使っていればこの地図がいかによく考え抜かれたものか分かってくる。というのも、とにかく見やすいのだ。シンプルな地図にびっくりするほど太い矢印で曲がるべき方向が表示されるので、運転中に一瞬ちらっと見ただけでルートが読みとれる。この地図なら、小さなディスプレイのサイズも全くハンディにならない。
また、3D表示での遠近感の付け方がまた独特だ。近くは非常に大きく、遠くは小さく表示されるわけだが、その度合いが他メーカーのそれとは比較にならないほど極端。そのため、交差点にさしかかれば自然とその交差点が非常に大きく拡大表示される。nuvi205は他メーカーのような交差点拡大表示機能は無いが、そもそもそんな機能が必要ないように作ってあるといえる。