トヨタは大きなクルマを作るのも得意というイメージがあると思うが、ちゃんと仕上がっているかどうかは別だ。新型マジェスタでは、よろしくない部分が露呈してしまったと思う。
一見、ものすごく静かで乗り心地もいいように感じるが、路面の悪いところではとたんにバネ上が揺すられる。ブレーキは、絶対的な制動力は十分だが、踏力に対してイメージどおりの減速Gが得られず、コントロール性が非常に悪い。
フットワークも、いとも簡単にフロントタイヤの向いたとおりにクルマが進まなくなる。全体として、大柄で重いボディを、どうにも御せていないのだ。ただ、レクサス『LS』と共用するV8エンジンと8速ATはマル。初期がややハイゲインなものの、シフトチェンジは極めてスムーズで、静粛性も相当にハイレベルだ。
今、この価格帯のクルマを買えるユーザーにとって、輸入車も含めたグローバルな選択肢の中で、装備面でのプライスバリューは高いほうだろう。しかし、新型マジェスタは、ちゃんとスムーズに運転するためには、かえって細心の注意が必要とされるような仕上がりでしかない。VIPを後席に乗せてショーファードリブンとして使われることもあるであろうクルマとしてはどうかと思う。
アッサリとしすぎたスタイリングも物足りない。このクルマをクラウンの兄貴分にしたかったのか、4代目セルシオにしたかったのか、迷走したのではないか? 歴代マジェスタの中でもっともカッコよかったと思うのは先代で、とくにトランクの処理には感心したものだ。歴代マジェスタには、どこかにデザイナーのこだわりを感じた。新型には印象に残るポイントが何もない。
■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★
オススメ度:★
岡本幸一郎|モータージャーナリスト
ビデオマガジン『ベストモータリング』の制作、自動車専門誌の記者を経てフリーランスに転身。新車から中古車、カスタマイズ事情からモータースポーツ、軽自動車から輸入高級車まで、幅広い守備範囲を誇る。「プロのクルマ好き!」を自負し、常にユーザー目線に立った執筆を心がけている。