【池原照雄の単眼複眼】随所に「渡辺カラー」のトヨタ役員人事

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【池原照雄の単眼複眼】随所に「渡辺カラー」のトヨタ役員人事
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世界ナンバーワン後の成長にらむ布陣に

トヨタ自動車が6月に実施する役員人事の大枠が見えてきた。初の外国人取締役が誕生するなど、就任3年目に入る渡辺捷昭社長が「世界生産ナンバーワン」後の成長持続力をにらんだ布陣とする。

渡辺体制2年目となった昨年の役員人事は小幅にとどまった。実質的には今回、初めて渡辺カラーが打ち出される。8人の副社長のうち、退任するのは中部国際空港社長への就任が内定した稲葉良●副社長(61)のみで、大きな異動はない。(●=偏:目、旁:見)

一方、専務陣ではいずれも技術者の服部哲夫氏(車両技術本部長、60)が関東自動車工業副社長、白井芳夫氏(商品開発本部長、58)が日野自動車副社長に就任する。また、調達本部長の若山甫専務(61)は豊田合成の副社長に就く。3氏とも将来の社長含みで転出する。

◆外国人初のボード入りも

新任専務のひとりには、トヨタ本体の取締役としては初の外国人となる米国トヨタ自動車販売社長(トヨタ常務役員)のジム・プレス氏(60)の昇格が固まった。プレス氏は大学卒業後、2年間フォードモーターに勤務した後、1970年に米国トヨタに入社している。

外国人だが、トヨタ米国法人の生え抜きといってもいい。トヨタウェイの価値観を十分体得しており、経営首脳の信望も厚い。2003年にトヨタが経営体制の刷新で常務役員制を導入した際も外国人の第1号として就任した。

また、昨年5月からは前社長がセクハラ事件で退任した北米統括会社、トヨタモーターノースアメリカの社長も兼務しており、トヨタ本体のボード入りは自然な流れともいえよう。
今年はトヨタが米国市場に『クラウン』で参入して50周年の節目。米国人がトヨタの取締役に就任することは、半世紀を経てトヨタが現地に密着した企業となったことをアピールするうえでも効果的だ。

◆豊田副社長は手腕問われる国内営業へ

もうひとつの注目点は、将来の社長候補である豊田章男副社長(50)の担当変更。2年前の副社長就任以来、調達部門を見てきたが、6月には国内営業に回る見通しだ。この2年間でトヨタを支えるサプライヤーとの人脈を構築、競争力の源泉である原価低減の現場も体験してきた。

国内営業は、市場が長期低迷するなか、商品開発も含めどう顧客やディーラーと対峙していくか、難しい舵取りが要求される。帝王学の仕上げとしてもふさわしいテーマとなる。

10日の「G-BOOK mX」発表の席上、国内営業の打開策を聞かれた豊田副社長は「顧客が車以外にどんどんお金を使うようになっている。クルマの魅力をさらに高めるとともに、(販売部門の)バリューチェーンも強めていくことが大切」と、答えた。国内営業への登板準備は万端といった様子だった。

《池原照雄》

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