今度のフィアット『パンダ』は何だかとっても普通だ。「さすがイタリア、真似できない…」思わず唸るような意表を突く味わいはない。これもグローバル化の宿命か。
薄められた個性にコンパクトカーの行く末を案じる今日この頃だが、唯一ポップな内外装の色使い(ボディ11色×明るい青/黄の内装2色)には救われた。見て、乗って、触ると何となく元気が出る色彩感覚とタッチ。そのセンスのよさこそが新型パンダの最大の魅力だろう。
走りは基本的にどうってことない。60ps、10.4kgm の1.2リッターSOHCエンジンは、日本の軽自動車とさほど変わらない。扱い勝手がよいとはいえないシーケンシャルMTによる走りは、ユニークだが完成度はもうひとつ。2ペダルは、楽ちんだが変速時のエンジン制御が荒く、足回りもややトリッキーな動きが目立った。でも、そのぎこちない乗り味がかえって印象的なのは事実。それを味とはいわないが、不思議と存在感のある走りなのだ。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★☆
インテリア/居住性:★★★☆☆
パワーソース:★★☆☆☆
フットワーク:★★☆☆☆
オススメ度:★★★★☆
伏木悦郎| 自動車評論家
70年代にレースを志し富士スピードウェイで参戦。その間偶然知り合った自動車雑誌編集者にスカウトされる形で業界入り。78年から一貫してフリーランス。FRの魅力に傾倒し国産車によるコンパクトFRの再生が宿願。