★お家芸には、つい納得してしまう
ホンダの新車種「エディックス」のネーミングは、普通の構成とは少し違う3人掛けシート2列、計6座席(six)をいろいろに組み合わせる(edit)という意味の造語だ。
横3人掛けと聞くと車幅も2mを超えた大きなクルマを想像してしまう。実際は隣の人と肩が当たらないように真ん中のシートを少し後退させ、運転席を軽自動車並みに外側に出して1.8m以内に車幅を抑えたコンパクトなミニバンだ。
パッケージングの提案はホンダのお家芸なので、ユーザーもエディックスを自然に納得してしまいそう。ルーフを絞らずに車幅の広さを生かしたプロポーションは安定感があり、アグレッシブなフロントデザインとあいまって、走りを重視する向きにも嬉しいルックスとなっている。
「まだ幼かった頃、前列3人掛けベンチシートのクルマで、親子3人でドライブに出かけたことがあります。そのとき味わった家族の一体感は、私の記憶に強く残っています」
これは団塊の世代ジュニアに近い年齢のエディックス開発者の弁。日本の高度成長時代、仕事が趣味のような親に育てられた子供の多くは家庭の温かみを体験できなかった。そういった世代への“オマージュ”か?
社会問題を、製品を通して提案していくこともメーカーの大切な仕事だ。 幼児虐待の暗い話題が多い昨今、若い親をサポートするようなコンセプトはメーカーの姿勢として評価したい。
50年代には、クルーザーのように長大なアメリカ車が低音を響かせて日本の街中を闊歩していた。青みを帯びた排ガスがなぜかいい匂いで、走って追いかけたものだ。低く幅広いクルマの後ろから見えるカップルの頭の位置が妙に気になった。当時の多くのアメリカ車は3人掛けのベンチシートであった。
クルマの両サイドに遠く離れていたり左側にピッタリと寄り添っていたりと親密度のバロメータなのだが、エディックスに乗るカップルは如何に?