ミシュラン『プライマシーHP』はスポーティカー、セダン、クーペ用ということで、ミニバン用やRV用とは明確な棲み分けをしている。そこで今回はアウディ『A4』2.0に履かせた。タイヤサイズは205/55R16 91Wである。充填空気圧は前後とも車両指定の2.2に合わせた。
ハンドリングが穏やかで乗りやすいというのが最初の印象だ。それはドライビングの基本に忠実なタイヤだということを意味する。ハンドルに対して、アクセルペダルに対して、ブレーキペダルに対して、ドライバーの操作に対して期待するだけ動いてくれるのだ。
もう少し具体的にお話しよう。ハンドルに関しては切れ込みに対して正確にノーズが動いてくれる。応答性としてはシャープというほどでもないが、至って穏やかで扱いやすい。かといってスポーティさがないのかというとそんなことはない。切っていったぶんだけちゃんと曲がってくれるから、道路の屈曲に合わせてハンドルを切るだけでいい。ワインディングロードでまわり込んでいるカーブでも、ハンドルを切り込むだけでノーズはさらに内側に向く。その動きに無理はないので、ドライバーも楽なのだ。
アクセルペダルに関しても、コーナーで踏み込んでいくと徐々にアンダーステアで外に膨らんでいこうとするが、その動きは予測がつき扱いやすい。アクセルペダルを戻していったときにもアンダーステアが弱まって内側に向いてくるが、速い戻しでもタックインは穏やかだから不安定にはならない。
ブレーキングはペダルを踏み込んでいき、ペダルそのものの遊びが終わったところからすぐに効いているのがわかる。ウエット路面でも体験したが、ウエットとは思えないほどしっかりとブレーキングフォースを発揮してくれるのだ。
ハンドル、アクセル、ブレーキというドライバーが操るものに対して、正確に反応してくれるから操りやすいのだ。だから長距離ドライブでも疲れないし、長期間乗っても飽きが来ないだろう。
乗り心地はトレッド面の硬さを感じない。芯の硬さもなく、トレッド面全体がうまくたわんでくれる感じだから、路面の不整をうまく吸収してくれる。バネ下も軽い感じで、ダインピングもいい。これによりハンドリングにも軽快感が生まれる。
しっかりしたグリップとスムーズな動きから、扱いやすさが美点のタイヤだ。プライマシーHPは、クルマのボディタイプを選ばず、あらゆるクルマに適合しそうな懐の深さを合わせ持つタイヤといえそうだ。